2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

トルコのEU加盟問題

ムスリムが国民の大半を占めるトルコは、1923年の建国以来、近代化、文明化の見本としてのヨーロッパに憧れ、その一員となることを目指してきた。さまざまな西欧化改革を断行し、西欧型の国家を作り、紆余曲折を経ながら40年以上EUへの正式加盟を目指しつづ…

ホロコーストと比較される、ムハマンド風刺画事件

南アフリカ聖公会大主教のデズモンド・ツツは、風刺画に対する憤怒を「その動機に対してではなく侮辱に対する反応」「起きたこととその後の余波がより深刻な病気な症状として見られてきた。もし関係が違ったものであったなら、風刺画は掲載されたなかっただ…

ヨーロッパで沸き起こるイスラーム・バッシング

ミッシェル・モールが事情収集した時に採取した、事件を纏める感想としては「それは結局コップの水を溢れさせる最後の一滴だった」という。911以降、ヨーロッパにひたひたと広まっていたムスリム・フォビアに、火をつけたのである。 トルコ&モロッコ出身者…

ムハマンド風刺画事件

ヨーロッパを駆け巡ったムスリムがらみの事件の二つ目。 事の発端は、デンマークで勃発した。子供向け絵本『クルアーンとムハマンドの生涯』用の挿絵を依頼したマンガ家達が、預言者ムハマンド*1を描く宗教禁止行為に抵触することを恐れて辞退した。だがイス…

スカーフ着用で表象されるアイデンティティ問題

結局、「ムスリムのスカーフ」が問題なのではなく、フランスのドイツのトルコの「ヨーロッパのスカーフ」が問題となっている訳である。 スカーフを着用する娘の多くは移民またはその子供であり、ヨーロッパ社会の自由を謳歌しながらも(差別を含む)様々な要…

ジェンダーイシューとしてのスカーフ着用問題

今度は個人的見地から見てみると問題は、当人/ムスリム/社会の3つの段階にある。個人的には、端的にいって、ムスリム女性に対してスカーフを取れとは、セクシュアル・ハラスメントに値する。当人が文化的に「慎み」の意味で覆っているものを公衆の面前で取…

トルコのスカーフ着用事件

ムスリムが多いトルコでは、「ライシテ」をモデルとした「ライクリッキ」というフランスよりも厳しい政教分離政策を取って世俗主義となっており、宗教を国家管理下に置いて制限している。 1925年帽子法で、フェズが禁止となった。しかし1968年、女子大学生が…

ドイツのスカーフ着用事件

植民地を殆どもたなかったドイツには、戦後個別雇用協定で移住してきたトルコ系労働者などの300万人というフランスに次ぐムスリムがいる*1。フランスの厳格な政教分離とは違って、ドイツは国家と教会を分離する明確な規定は無く、教育行政に関しては、州(ラ…

フランスのスカーフ着用事件

フランスには、ヨーロッパ各国では一番多い約500万人のムスリムがいると推定されている。マグリブや西アフリカそして東南アジアといった植民地から移民してきた人々である。 事の起こりは1989年。公立中学で3人のムスリム女生徒がスカーフ着用して登校した…

ヨーロッパ文明の起源

ギリシャ神話に、フェニキアの女王エウロベというのが登場する。エロウベ=ヨーロッパの語源である。彼女はレバノンあたりに住んでいた。それをゼウスが一目ぼれして、牛に化けて、背中に載せて海を越える。これを「エロウベの誘惑」という。こうしてギリシ…

再構築を迫られるリベラル・デモクラシー

さらに前回id:hizzz:20090309の続き。

「ホロコースト」はユダヤだけ示す、果たしてそれが正しい歴史定説か?

ネットの一部で「ホロコーストのユダヤ唯一性」を主張して、ナチの「最終解決」撲滅作戦を、ユダヤとその他(ロマ、ポーランド人、犯罪者、障害者、同性愛者)とは区別すべきだとする説がある。端的に言えば、ホロコーストに関して、ロマその他を含めないで…

EUとロマ・少数民族

1999年欧州評議会は、「EU加盟申請諸国におけるロマの地位改善のための対策に関する原則」を決定した。「OSCE(ヨーロッパ安保協力機構)の公約に則り、ロマに帰属する人々が直面しているきわめて重大な困難を認識する必要がある。そして、安全な機会均等を…

ホロコースト生還者たちの戦後

かろうじて生き延びて、収容所から生還した多くのロマは、無国籍者とされた。やっとこさ収容所以前の土地にたどりついても、もともと厄介視されていた村落は、物理的にも破壊されており、また生き残った同族もわずかであるので、昔ながらの大家族集団による…

国民の線引き

同性愛者や精神病者や犯罪者といった個人属性の他に、ナチが収容所送りにした人々の民族属性として、ユダヤとロマ(スィンティ=ドイツ・ロマ)*1を名指ししたということは、ほかの民族と比べて、彼らが「土地」に根差しているかいないかの大きな違いがあっ…

「ジプシー」と呼ばれたロマ

エジプト人=エジプシャンが転じた「ジプシー」という呼び名は、日本ではポピュラーであるが、その名称は蔑称として意味づけられたことが強いので、現在では公式にはその彼らは「ロマ」と名指す。その人々は、インド北西部パンジャブ地方起源地として、8〜1…

もう一つのホロコースト

欧米で神聖化したホロコーストの悲劇と、それを金儲けに利用するユダヤ系産業資本を批判して、「ホロコーストの唯一性を主張することは、ユダヤ人の唯一性を主張することになる。ユダヤ人の苦しみではなく、ユダヤ人が苦しんだということが、ザ・ホロコース…

人権理念の周縁に留め置かれ続ける流浪の民

『ショアー』などの商業的成功も手伝って、一般的には「ホロコースト」「ディアスボラ」といったら、ユダヤ民族迫害が第一義に想像されてしまうのだが、迫害は彼らだけの独占問題ではない。id:hizzz:20090204で書いたように、大戦後は東ヨーロッパに住む多く…