成り立ちいろいろ、法いろいろ

他国の憲法といえば、「マグナカルタ」とか「人民の人民による、、」「自由、平等、博愛」ぐらいしか知らないワタクシ。なんかかんかいう前に(てゆーかもう随分あだこだ言ってるけど)他の例もみなくちゃね。てな訳で、よそんトコにはナニがかいてあるのか、主権の在り方を中心にざざっと掛け足。

アメリカ合衆国憲法 1788年制定1992年改正

  • 前文
  • 第1条 議会
  • 第2条 大統領
  • 第3条 司法
  • 第4条 連邦制
  • 第5条 憲法修正
  • 第6条 最高法規
  • 第7条 発効
  • 修正条項

国民規定:
前文:われら合衆国の人民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に備え、一般の福祉を増進し、われらとわれらの子孫のうえに自由のもたらす恵沢を確保する目的をもって、アメリカ合衆国のために、この憲法を制定する。
修正第1条:連邦議会は、国教を樹立し、あるいは信教上の自由な行為を禁止する法律、または言論あるいは出版の自由を制限し、または人民が平穏に集会し、また苦痛の救済を求めるため政府に請願する権利を侵す法律を制定してはならない。
修正第14条:合衆国において出生し、またはこれに帰化し、その管轄権に服するすべての者は、合衆国およびその居住する州の市民である。いかなる州も合衆国市民の特権または免除を制限する法律を制定あるいは施行してはならない。またいかなる州も、正当な法の手続きによらないで、何人からも生命、自由または財産を奪ってはならない。またその管轄内にある何人に対しても法律の平等な保護を拒んではならない。

http://tokyo.usembassy.gov/j/amc/tamcj-071.html

古参に当たる米法。代表民主制ということで、まず議会&議員に関する条項がずずいと並ぶ。制定時は7条項だけだったが、以降修正条項として随時追加改定されてきた。修正第1条で、人権というか「自由」への議会による不侵犯が明記されて以降、13条(1865年)で有名な「奴隷制の廃止」が明文化。また18条(1919年)では悪名高い「禁酒法」が制定されたが、無論これは、廃止。

●フランス第5共和国憲法 1858年制定2005年改正

  • 前文
  • 第1章 主権
  • 第2章 共和国大統領
  • 第3章 政府
  • 第4章 国会
  • 第5章 国会と政府との関係
  • 第6章 条約および国際協定
  • 第7章 憲法
  • 第8章 司法権
  • 第9章 高等法院
  • 第10章 政府構成員の刑事責任
  • 第11章 経済社会評議会
  • 第12章 地方公共団体
  • 第13章 ニュー=カレドニアに関する経過規定
  • 第14章 提携協定
  • 第15章 欧州共同体および欧州連合
  • 第16章 改正
  • 第17章 〔経過規定〕 削除

国民規定:
前文:フランス人民は、1789年宣言により規定され、1946年憲法前文により確認かつ補完された人の諸原理に対する忠誠、および2004年環境憲章により規定された権利と義務に対する忠誠を厳粛に宣言する。
第3条:国民の主権は人民に帰属し、人民はそれを代表者を通じて国民投票の方法で行使する。人民のいかなる部分も、いかなる個人も、その行使を占奪してはならない。

高橋和之編『世界憲法集』より

かの「自由、平等、博愛」は、第2条、国旗国歌と原理「人民の人民による人民の為の統治」と並んで標語として制定。第3条では、上記の他に「選挙による地位および男女の平等な参画」が登場。先に憲法制定した米が議会主権なのに変わって、国民主権が色濃くく明記。最近の改定では、「環境憲章」が追加された。http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/222/022204.pdf
しかし、ありそで無い。何故かネット上で見つかんナイよぉ、仏憲法全文和訳。

イタリア共和国憲法 1948年制定2003年改正

  • 基本原理
  • 第1部 市民の権利および義務
    • 第1章 市民的関係
    • 第2章 倫理的・社会的関係
    • 第3章 経済的関係
    • 第4章 政治的関係
  • 第2部 共和国の組織
    • 第1章 国会
    • 第2章 大統領
    • 第3章 政府
    • 第4章 司法
    • 第5章 州、県、市町村
    • 第6章 憲法保障
  • 経過および補則規定

国民規定:
第1条:イタリアは労働に基礎を置く民主的共和国である。 主権は人民に属し、人民が主権を憲法の形式および制限に基づき行使する。
国際関係:
第11条:イタリアは、他人民の自由に対する攻撃の手段としての戦争及び国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄する。国家間の平和と正義を保障する体制に必要ならば、他の国々と同等の条件の下で、主権の制限に同意する。この目的を持つ国際組織を促進し支援する。

http://homepage3.nifty.com/bologna/costituzione_indice.html

頭からイキナリ「労働に基礎をおく」って、ちょっとびっくり。第4条でもかさねて労働権利/仕事義務をたたみかけている。流石ラテンなお国ならでわ、なのか? 第1部の「〜関係」という項目で区分けされた行動規定が、日本でいう刑法的規定を含んだ詳細に渡る人権を表してる。「戦争放棄」だけでなく、他の平和的国際組織による食い込んだ「主権の制限」さえもが、行動想定されてる。但し、第52条で「祖国の防衛は、市民の神聖な義務である。」と兵役と軍隊を規定している。

大韓民国憲法 1948年制定1987年改正

  • 前文
  • 第1章 総綱
  • 第2章 国民の権利および義務
  • 第3章 国会
  • 第4章 政府
  • 第5章 法院
  • 第6章 憲法裁判所
  • 第7章 選挙管理
  • 第8章 地方自治
  • 第9章 経済
  • 第10章 憲法改正
  • 附則  修正案

国民規定:
第1条:大韓民国の主権は、国民に存し、すべての権力は、国民から由来する。
第10条:すべての国民は、人間としての尊厳及び価値を有し、幸福を追求する権利を有する。国は、個人の有する不可侵の基本的人権を確認し、これを保障する義務を負う。

国際関係:
第5条:大韓民国は、国際平和の維持に努力し、侵略的戦争を否認する。国軍は、国の安全保障と国土防衛の神聖な義務を遂行することを使命とし、その政治的中立性は遵守される。

http://www.geocities.co.jp/WallStreet/9133/kenpou.html

総綱では、南北分断を主眼にすえた、国民主権→領土→国際関係→国際法規→外国人保障→公務員→政党という並び。第3条で「韓半島及びその附属島嶼」領土を定め、第4条で「統一を指向」している。都合9回改正されているが体制変化で6区分として、民主化定着後に全文改定公布された現憲法を「第6共和国憲法」と呼んでいる。「国民の権利及び義務」では、身体の自由に関する規定が細かくなっている。

ドイツ連邦共和国基本法 1949年制定2002年改正

  • 前文
  • 1 基本権
  • 2 連邦およびラント*1
  • 3 連邦議会
  • 4 連邦参議院
  • 4a 合同委員会
  • 5 連邦大統領
  • 6 連邦政府
  • 7 連邦の立法
  • 8 連邦法律の執行および連邦行政
  • 8a 共同任務
  • 9 裁判
  • 10 財政制度
  • 10a 防衛上の緊急事態
  • 11 経過規定および終末規定

国民規定:
第1条:個人の尊厳は不可侵である。それを尊重し、保護することは国家権力すべての義務である。 ドイツ国民は故に、各々の人間社会、世界における友好および正義の基礎としての、不可侵かつ譲り渡すことのできない人権を支持することを表明する。
第20条:すべての国家権力は、国民に由来する。国家権力は、選挙および投票において国民により、かつ立法・執行権および裁判の個別の機関によって行使される。

http://www.fitweb.or.jp/~nkgw/dgg/

国民主権は、国民への「不可侵」という国家拘束がまずもってガリガリ表現される。連邦&議会以下は手続きに始終。ナチからは無論コミュからも反憲法勢力への抵抗として20条「国家秩序の基礎、抵抗権」が制定されてる。東西合併後も、旧西ドイツ憲法ボン基本法)をベースに盛んに改正を繰り返して使用されている。「兵役義務」と共に「良心的兵役拒否」代役義務。最近では、仏と同じく「環境保護規定」や、外国人労働者の「庇護権」や「犯罪被疑者の監視」などの改正がされてる。

スペイン王国憲法 1978年制定1992年改正

  • 前文
  • 序編
  • 第1編 基本的な権利及び義務
  • 第2編 国王
  • 第3編 国会
  • 第4編 内閣及び行政
  • 第5編 内閣と国会の関係
  • 第6編 司法権
  • 第7編 経済及び財政
  • 第8編 国の地方組織
  • 第9編 憲法裁判所
  • 附則

国民規定:
前文:スペイン国民は、正義、自由及び安全を確立し、並びに国民全体の福祉を増進することを念願して、主権を行使し、次のとおり意思を宣言する。
第1条:国家の主権はスペイン国民に存し、すべての国家権力はスペイン国民に由来する。

http://constitucionalismo.way-nifty.com/quijote/06_1978/index.html

王様のいる議会君主制も。フランコ独裁に変わって民主化を進めた国王だけに、序編と第1編で、国家機能形態のアウトラインと国民権利&義務がおさえられたその次に、王室に関する条項となっている。第18条で、名誉権/プライバシー権/肖像権が権利規定に。軍隊を保持しているが、第30条では「兵役義務」と共に「良心的兵役拒否」を制定してる。通常司法機関とは別に行政府監督機関(オンブズマン)として「護民官」が設定され、違憲や請願の提訴権を持つ。

中華人民共和国憲法 1982年制定2004年改正

  • 序言
  • 第1章 総綱
  • 第2章 市民の基本的権利および義務
  • 第3章 国家機構
  • 第4章 国旗、国歌、国章、首都
  • 附則  修正案

国民規定:
第1条:中華人民共和国は、労働者階級の指導する、労農同盟を基礎とした人民民主主義独裁の社会主義国家である。
第2条:中華人民共和国のすべての権力は、人民に属する。人民が国家権力を行使する機関は、全国人民代表大会及び地方各級人民代表大会である。人民は法律の規定に従い、各種の方法及び形式を通じて国家の事務を管理し、経済及び文化事業を管理し、社会主義の事務を管理する。

高橋和之編『世界憲法集』より
http://gc.sfc.keio.ac.jp/class/2006_17126/slides/07/8.html
http://www.geocities.jp/ps_dictionary/c/xianfa.htm
香港特別行政区基本法 http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/pacific/hongkong/kihon.htm

社会主義も見てみよう。「全国人民代表大会」が中央集権となっている民主主義。ところで毛沢東が唱えた「新民主主義」とは、帝国主義、封建主義、官僚資本主義を敵として、反対する人を「人民」とし、人民間で民主主義を実践して「敵」を撃ち、「人民」を護ることを第一とする主義だそーな。制定以降5回改定してる。序言の冒頭「中国は、世界で歴史が最も悠久な国家のひとつである。中国各民族人民は、輝かしい文化を共同して創造し、栄光ある革命の伝統を有している。」と始まる革命史を朗々と詠い上げる。ううむ。

ロシア連邦憲法 1993年制定

国民規定:
第2条:人間およびその権利と自由は最上の価値である。人および人民の権利と自由を承認し、遵守し、かつ擁護することは国家の義務である。
第3条:ロシア連邦における主権者および権力の唯一の源は、ロシアの多民族からなる人民である。人民は、直接に、かつ国家権力機関および地方自治機関を通じて、権力を行使する。人民投票および自由選挙は、人民権力の最高の直接的表明である。何人もロシア連邦において権力を収奪することはできない。権力の収奪または権限の横領は、連邦の法律によって訴追される。

高橋和之編『世界憲法集』より
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/9354/lecture/2004/SG04A1-1.pdf
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/9354/lecture/2004/SG04A1-2.pdf

この中では一番新しい憲法。前文から「われわれロシア連邦の多民族からなる人民」と、多民族による国家統一が強調されている。第5条住民直接選挙による「連邦制の基本原則」が、プーチン政権の下位立法案では連邦大統領提案の代表機関選任になるなど、ビミョーな解釈運用が行われている。

日本国憲法 1946年制定

  • 前文
  • 第1章 天皇
  • 第2章 戦争の放棄
  • 第3章 国民の権利及び義務
  • 第4章 国会
  • 第5章 内閣
  • 第6章 司法
  • 第7章 財政
  • 第8章 地方自治
  • 第9章 改正
  • 第10章 最高法規
  • 第11章 補則

国民規定:
前文:日本国民は,正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し,われらとわれらの子孫のために,諸国民との協和による成果と,わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し,政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し,ここに主権が国民に存することを宣言し,この憲法を確定する。
第11条:国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

国際関係:
第9条:日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
改正:
第96条:この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM

最後に日本。議会制民主主義な日本では、国会と政府が国民主権を代理行使する。代理行使行政(但し天皇のだが)は戦前(大日本憲法)も同じで、その国会と政府が「武力の行使」したから、まず前文でその手法を放棄する。それで「国民主権宣言」出来るというヤヤコシイ形態で、前憲法を露払い。なんでこんな変てこりんなコトになってるのかといえば、そりゃあ戦前戦後を通じて同じ天皇をおいとく為に、国会と政府は天皇制を利用して対外的に惨禍を起しませんと最先に言っておく。そうした地ならしの上に、本文第1章「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」天皇条項、すなわち国民国家のフィクションとしての象徴天皇を立てる。そのフィクションが第9条内容を保障するカタチをとってから、やっとこさ国民の基本的人権や義務が触れられ定められる。ふぅ。。。

日本国憲法前文に関する基礎資料 世界各国の憲法前文付 衆院憲法調査会
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/shukenshi032.pdf/$File/shukenshi032.pdf