2009-01-01から1年間の記事一覧

現在の在民管理制度と国家の狙い

1990年の出入国管理および難民認定法の改正では、外国籍の日系*1二世・三世とその家族*2が、「定住者」または「日本人の配偶者等」資格で許可された。>「定住者告示」の一部改正 http://www.moj.go.jp/NYUKAN/HOUREI/h07.html それまで研修目的で来日する外…

戸籍と出入国管理と「在日」

1945年、12月6日付法務府民事局長通達「朝鮮又は台湾と内地間における父子の認知について」で、「朝鮮人及び台湾人は、内地に在住している者を含めて全ての日本国籍を喪失する」と、最初のラインが政府内で定められた。 続いて1947年、大日本帝国憲法下で公…

国家による在民管理制度

「入管法」とは「戸籍」管理外の国内在住/在留の非日本国籍者管理なのである。だから、「戸籍」制度と「入管法」がセットになってようやっと、国内の全ての在民管理が成り立つ。すなわち、国家制度に於ける排外主義を考えることは、国内制度を、誰を国民成員…

改定入管法・入管特例法・住基法の成立に対する抗議声明

外国人登録法(昭和二十七年四月二十八日法律第百二十五号)最終改正:平成一六年一二月三日法律第一五二号http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S27/S27HO125.html 外国人登録法施行規則(平成四年十一月二十七日法務省令第三十六号)最終改正:平成一四年二月…

「反日上等」のリスク

政権交代して、反政府派になった在特会を始めとした排外主義者の行動が幾つか伝えられるにつれて、一部の左翼自称な皆様は色々「反日」思考拡大しブログなどで展開して「反日上等」情緒紐帯などなさっているようだ。が、蕨市から始まる在特会デモに於いては…

内と外の二元管理の泥縄ぶり

ちょっと、あんまりにもアサッテに先鋭化した議論方向にばかりにはてダ社会派が向かっていて現実問題が断片化して俯瞰で把握されてないようなので、事の基本を整理する為にちこっとアレコレ。

ホロコースト研究の新潮流

21世紀にはいって起こったヨーロッパ史学研究をとりまく変化とは、大きく分けて3つある。1.統一ドイツ後、東側で保管されていた資料が次々公開となり、研究が深化した*1。2.ECという政治枠組みが生成されその東方拡大は、ナチ犯罪の捉え方も、ドイツ1…

意図か機能か、不毛な歴史家論争

「絶滅命令」は具体的には、いつ、誰に、なにを、どのように、どこで、といったことに関して、人種絶滅作戦の総統指令を直接証拠づける資料がない中、ホロコーストが起こった要因について、歴史研究者の中では意見が2派に分かれた。「意図派」とは、ヒトラ…

ホロコースト賠償騒動

ホロコーストの生存者やその遺族たちが、自分たちの没収された財産について権利請求することそのものが問題で、騒動を引き起こすのではない。問題は、そうした遺族=相続人すらいない「相続人不在財産」を巡る所有権争いである。国際法も各国の法律も大体に…

ナチスの人種選別規定と運用

ナチスの人種差別法とは、1935年制定の「ニュルンベルク法」(ライヒ国旗法/公民法/ドイツ血と名誉を守る法の総称)を指す。その上で38年と39年に2つの反ユダヤ法が制定された。本文だけ読むと、ドイツ人とユダヤ人しか規定していないように読め、これを「…

歴史認識手法のおさらい

巷で喧伝されるナチ犯罪否定論の主な内容とは、大体以下のようなものになるだろうか。 1.ガス室は存在しなかったし、ホロコーストもなかった。 2.チクロンBは殺虫剤で殺人用ではない。 3.「ユダヤ人の最終解決」とは絶滅ではなく東欧移住。それ以外の…

ホロコースト・マトリックス

…と、大きく出ではみたものの、以下はその一端なのであしからず。 「ホロコースト」はユダヤだけ示す、果たしてそれが正しい歴史定説か?id:hizzz:20090309#p6への反論に対する返答を含めた、id:hokusyu:20090324、id:hokusyu:20090326、id:noharra:20090405…

トルコのEU加盟問題

ムスリムが国民の大半を占めるトルコは、1923年の建国以来、近代化、文明化の見本としてのヨーロッパに憧れ、その一員となることを目指してきた。さまざまな西欧化改革を断行し、西欧型の国家を作り、紆余曲折を経ながら40年以上EUへの正式加盟を目指しつづ…

ホロコーストと比較される、ムハマンド風刺画事件

南アフリカ聖公会大主教のデズモンド・ツツは、風刺画に対する憤怒を「その動機に対してではなく侮辱に対する反応」「起きたこととその後の余波がより深刻な病気な症状として見られてきた。もし関係が違ったものであったなら、風刺画は掲載されたなかっただ…

ヨーロッパで沸き起こるイスラーム・バッシング

ミッシェル・モールが事情収集した時に採取した、事件を纏める感想としては「それは結局コップの水を溢れさせる最後の一滴だった」という。911以降、ヨーロッパにひたひたと広まっていたムスリム・フォビアに、火をつけたのである。 トルコ&モロッコ出身者…

ムハマンド風刺画事件

ヨーロッパを駆け巡ったムスリムがらみの事件の二つ目。 事の発端は、デンマークで勃発した。子供向け絵本『クルアーンとムハマンドの生涯』用の挿絵を依頼したマンガ家達が、預言者ムハマンド*1を描く宗教禁止行為に抵触することを恐れて辞退した。だがイス…

スカーフ着用で表象されるアイデンティティ問題

結局、「ムスリムのスカーフ」が問題なのではなく、フランスのドイツのトルコの「ヨーロッパのスカーフ」が問題となっている訳である。 スカーフを着用する娘の多くは移民またはその子供であり、ヨーロッパ社会の自由を謳歌しながらも(差別を含む)様々な要…

ジェンダーイシューとしてのスカーフ着用問題

今度は個人的見地から見てみると問題は、当人/ムスリム/社会の3つの段階にある。個人的には、端的にいって、ムスリム女性に対してスカーフを取れとは、セクシュアル・ハラスメントに値する。当人が文化的に「慎み」の意味で覆っているものを公衆の面前で取…

トルコのスカーフ着用事件

ムスリムが多いトルコでは、「ライシテ」をモデルとした「ライクリッキ」というフランスよりも厳しい政教分離政策を取って世俗主義となっており、宗教を国家管理下に置いて制限している。 1925年帽子法で、フェズが禁止となった。しかし1968年、女子大学生が…

ドイツのスカーフ着用事件

植民地を殆どもたなかったドイツには、戦後個別雇用協定で移住してきたトルコ系労働者などの300万人というフランスに次ぐムスリムがいる*1。フランスの厳格な政教分離とは違って、ドイツは国家と教会を分離する明確な規定は無く、教育行政に関しては、州(ラ…

フランスのスカーフ着用事件

フランスには、ヨーロッパ各国では一番多い約500万人のムスリムがいると推定されている。マグリブや西アフリカそして東南アジアといった植民地から移民してきた人々である。 事の起こりは1989年。公立中学で3人のムスリム女生徒がスカーフ着用して登校した…

ヨーロッパ文明の起源

ギリシャ神話に、フェニキアの女王エウロベというのが登場する。エロウベ=ヨーロッパの語源である。彼女はレバノンあたりに住んでいた。それをゼウスが一目ぼれして、牛に化けて、背中に載せて海を越える。これを「エロウベの誘惑」という。こうしてギリシ…

再構築を迫られるリベラル・デモクラシー

さらに前回id:hizzz:20090309の続き。

「ホロコースト」はユダヤだけ示す、果たしてそれが正しい歴史定説か?

ネットの一部で「ホロコーストのユダヤ唯一性」を主張して、ナチの「最終解決」撲滅作戦を、ユダヤとその他(ロマ、ポーランド人、犯罪者、障害者、同性愛者)とは区別すべきだとする説がある。端的に言えば、ホロコーストに関して、ロマその他を含めないで…

EUとロマ・少数民族

1999年欧州評議会は、「EU加盟申請諸国におけるロマの地位改善のための対策に関する原則」を決定した。「OSCE(ヨーロッパ安保協力機構)の公約に則り、ロマに帰属する人々が直面しているきわめて重大な困難を認識する必要がある。そして、安全な機会均等を…

ホロコースト生還者たちの戦後

かろうじて生き延びて、収容所から生還した多くのロマは、無国籍者とされた。やっとこさ収容所以前の土地にたどりついても、もともと厄介視されていた村落は、物理的にも破壊されており、また生き残った同族もわずかであるので、昔ながらの大家族集団による…

国民の線引き

同性愛者や精神病者や犯罪者といった個人属性の他に、ナチが収容所送りにした人々の民族属性として、ユダヤとロマ(スィンティ=ドイツ・ロマ)*1を名指ししたということは、ほかの民族と比べて、彼らが「土地」に根差しているかいないかの大きな違いがあっ…

「ジプシー」と呼ばれたロマ

エジプト人=エジプシャンが転じた「ジプシー」という呼び名は、日本ではポピュラーであるが、その名称は蔑称として意味づけられたことが強いので、現在では公式にはその彼らは「ロマ」と名指す。その人々は、インド北西部パンジャブ地方起源地として、8〜1…

もう一つのホロコースト

欧米で神聖化したホロコーストの悲劇と、それを金儲けに利用するユダヤ系産業資本を批判して、「ホロコーストの唯一性を主張することは、ユダヤ人の唯一性を主張することになる。ユダヤ人の苦しみではなく、ユダヤ人が苦しんだということが、ザ・ホロコース…

人権理念の周縁に留め置かれ続ける流浪の民

『ショアー』などの商業的成功も手伝って、一般的には「ホロコースト」「ディアスボラ」といったら、ユダヤ民族迫害が第一義に想像されてしまうのだが、迫害は彼らだけの独占問題ではない。id:hizzz:20090204で書いたように、大戦後は東ヨーロッパに住む多く…