ドイツのスカーフ着用事件

植民地を殆どもたなかったドイツには、戦後個別雇用協定で移住してきたトルコ系労働者などの300万人というフランスに次ぐムスリムがいる*1。フランスの厳格な政教分離とは違って、ドイツは国家と教会を分離する明確な規定は無く、教育行政に関しては、州(ラント)が立法権限を持っており、地区ごとにその扱いが違ってくることとなる。
1998年、アフガニスタン出身女性教師がスカーフ着用して、教員不適格として採用拒否された。教師は裁判で争い、2003年勝訴した。行政裁判所は、教壇に立つキリスト教系修道女の修道服との兼ね合いで、スカーフ着用を合憲と判断した。が、しかし2007年上級行政裁判所は、学校法違反と違憲判断。結局、8つのラントがスカーフ禁止措置をとった。
こうして地域に依って判断が割れた訳は、ドイツではキリスト教教育が法的に保護されているのに、イスラーム教育の権利がないことが、公平性に欠けるとして、大きな問題となったのである。

*1:他の地域では、イギリス160万人、スペイン100万人、オランダ95万人、イタリア80万人、オーストリア34万人、ベルギー/スイス/スウェーデン各30万人、デンマーク27万人。@『イスラーム戦争の時代―暴力の連鎖をどう解くか