ヨーロッパ文明の起源

ギリシャ神話に、フェニキアの女王エウロベというのが登場する。エロウベ=ヨーロッパの語源である。彼女はレバノンあたりに住んでいた。それをゼウスが一目ぼれして、牛に化けて、背中に載せて海を越える。これを「エロウベの誘惑」という。こうしてギリシャ=ローマ文明に始まるヨーロッパの輝かしい時代が花開く道スジとなるが、そのギリシャは、オリエントとの混血だということは、ヨーロッパ人は忘れている。
ギリシャ神話で扱う地域は、せいぜいレバノン・シリア・バビロンまでで、エジプト文明より500年早くバグダッドのアッパース王朝が栄え、エジプトがメソポタミアやシリアと交易や王家同士の婚姻をしていたこと、要するにエジプトとペルシャの文明が一緒になってギリシャ文明が出来たことをシカトして、ボッチチェリの如く地中海からヴィーナスが湧いて出たように歴史を描く。以降、id:hizzz:20090204でさらったように、自己定義を深めてヨーロッパ中心主義史観を発達させる。その過程に於いて、邪魔な「他者」は、「野蛮人」という役に押し込めてその歴史と意識を奪った。
さて、911以後、「テロ問題」をめぐって経済&軍事力で制圧しようとする米国と、「原理主義」に凝り固まったテロ組織との『文明の衝突ハンチントンが取りざたされているが、その「衝突」とやらに登場している重要組織がもうひとつある。それが、かくいうヨーロッパ。それまで、トルコ人であるとかモロッコ人というように、民族を名指しして外国人排斥してた傾向にかわって、911以降「ムスリム」全般を除外するようになったという。そんな欧米の仕儀にいち早く反応したのが、ヨーロッパの進展と反比例するように埋没してはいかなかった地域を、「黄禍論」で脅威化して伝播させ収容所おくりされた日系を含めたアジア系米国人たち。>id:hizzz:20080315
アフガニスタンイラク戦争批判でアメリカによるイスラームに対する優越感と差別や、恐怖の裏返しとしての敵意は、ヨーロッパの方が実は、根強いのである。むしろ「ブッシュのアメリカ」と呼ばれた薄いアメリカなんかよりも、国家理念&国民国家原理原則を堅持しようとする元祖・本家ヨーロッパこそが、その本質と信じられている分だけ一元主義となって、ムスリムなどの他者を追い詰め、相容れない衝突を引き起こしているのではないだろうか?
…てな訳で、ヨーロッパに於けるイスラーム関連を、幾つかさらってみる。