現在の在民管理制度と国家の狙い

1990年の出入国管理および難民認定法の改正では、外国籍の日系*1二世・三世とその家族*2が、「定住者」または「日本人の配偶者等」資格で許可された。>「定住者告示」の一部改正 http://www.moj.go.jp/NYUKAN/HOUREI/h07.html
それまで研修目的で来日する外国人は「研修」在留資格を得て、6か月あるいは1年の在留期間を何回か更新しながら「研修」を受け、「就労」せずに帰国する建前となっていたものを、2003年に受入先研修機関に引続き就労する場合に限り「特定活動」資格を与える「技能実習制度」が始まった。しかし、これはあくまでも「研修」という枠であった為、かれらは月額6万円の「労働者」としてはなんの保護もされず、様々な問題となった。
2008年、インドネシアやフィリピンとの間で経済連携協定(EPA)が結ばれ国会承認を経て、インドネシア人当初2年間で最大1000人(看護師400人、介護福祉士候補者600人)、フィリピン人は2年間で最大500人(看護200人、介護300人)を、入国許可。しかしこれは就労しながら、3年以内に国家試験を受験し合格すれば引き続き就労出来るが不合格なら帰国する条件がついており、3年以内で一般日本人にも意味不明な古色蒼然とした医学専門用語での筆記国家試験クリアという外国人になんの配慮のない関門自体が、単に規制が厳しくなった(不法就労)外国人の代わりとして組織ぐるみでより低賃金の労働者補給に使われた「研修・技能就労制度」のように、彼らを結局はていのいい周縁労働者として「使いまわし」にする為の建前になりはしないかという懸念がある。
技能・実習制度 -外国人の労働問題 水野英樹
http://homepage1.nifty.com/rouben/rippou/ginoujishuseido200710.htm
「研修生及び技能実習生の入国・在留管理に関する指針」法務省入国管理局
http://www.moj.go.jp/PRESS/071226-1.html
「研修・技能実習制度の現状及び制度改正の概要について」法務省
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinzai/jitsumu/dai4/siryou2_1.pdf
外国人研修生問題ネットワーク
http://k-kenri.net/

2009年「住民基本台帳法」住基法改定・「外国人登録法」外登法の廃止と「出入国管理及び難民認定法入管法改定・「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」入管特例法改定がセットで国会成立。
これは従来の外登法+入管法での管理を入管法に一元化して、1.特別永住者平和条約国籍離脱者:「在日」など旧植民地出身者とその子孫)、2.1以外の3ヶ月以上の中長期在留者(「特別永住者」の配偶者や子供と、難民や「日系」などの「定住者」資格者、EPA外の制限付研修(就労)者はこの枠に含まれる)、3.非正規滞在者(オーバーステイなど)*3の3つに区分し、1には「特別永住者証明書」交付、2には「在留カード」交付し、この2者は住民基本台帳に載せるが、2はカード常時携帯が義務。1の「特別永住者証明書」には顔写真・国籍(地域)・住居地・生年月日等を記載し、ICチップにも記載する。2のICチップ付「在留カード」には、顔写真・氏名・生年月日・性別・国籍・住居地・在留資格と期間・許可の種類・就労制限の有無等が書き込まれ、在留者の所属機関にも届出の義務を課す。届出遅延や虚偽届出には刑事罰が科されると、外国人にはやたら過酷なものになっている。
その一方、長らく「中国」籍扱いとされた台湾人が、入管難民法改正でやっと「台湾」籍に名称変更された。
日本の査証・在留資格一覧
http://www.interq.or.jp/tokyo/ystation/jvisa3.html

しかし、これは外国人のことだと遠巻きにしている問題ではない。日本国籍者を対象とした「住基法」も同様の方向基盤準備してるといえる。現在、「住基カード」は、氏名・性別・住居地・生年月日の4項目だけであるが、ICチップにはもっと情報が入る。しかも、申請時に顔入り公的身分証(パスポートや運転免許証や社員証)のない者は、2つの別の公的証書(健康保険証や年金証など)を求められその番号は申請書には書きとめられる。なんのことはない、どういう身分証を保持してるかそこで収集されてしまうのである。そして、カードの利点として銀行のキャッシュカードのように暗証番号で、住民票や印鑑登録証が取れるよと囁く。その2つが一緒くたになるのなら、健康保険証や年金証も勿論一緒に出来る。主に個々人の身分が変遷したのが追えなくて起こった「消えた年金問題」は、この一元化への有力な根拠ともなる。
現在、顔入り+4項目記載と顔なし+氏名の2種類が作れるが、窓口では身分証明書として通用しないところがあると、しつこく顔入りを進められるという。銀行の10万以上の送金にも公的身分証提示を求められる昨今である。要は、国民全員にもなにがしかの公的身分証常時携帯が求められる状態に社会システムが近づいている。
家制度による身分認証方法とは、家族親族といった血縁でありそれを世帯主代表していたのである。ところが、流動化する社会に於いては、血縁から遠く離れた独身単一世帯が基調となる。地域に血縁つながりがある国民には4項目で良いが、在留外国人はそれが無い。だから、出来得るだけ個人情報収集に向かう。かくして国民総背番号制は間近である。結局、家族親族身分管理は戸籍/住民登録で個人管理はICチップ入カードでという2段階の管理強化へシステムは動いている。

出入国管理業務の業務・システム最適化計画(改定) 総務省
http://www.moj.go.jp/KANBOU/JOHOKA/SAITEKIKA-KOBETSU/ko-20.pdf
入管システム最適化計画の構想と問題点 情報人権ワークショップ事務局
http://www.ws4chr-j.org/Lab/ProblemsOfNyukanSys/prblmNyukSys.htm

しかし、こうやって細部に渡るまで管理すればする程に、経費削減にはならず穴を積めるためには大管理体制=コスト高に向かうは、一方完全で完璧な管理制御なぞ不可能なのに、またぞろそのシステム過信の上で編み上げた有りがちな最低限保守管理で一括集中化してクラッシュが起きた時のわやくちゃカオス状態は、消えた年金ドコロでは済まないのである。

移動は人間の自由に欠かせない重要な要素である:
移動は通常、移住者たちとその家族、出身地、そして移住先のコミュニティに利益をもたらす。しかし、移住が人間開発の促進に寄与する可能性は、さまざまな障壁によって制約されている。国内外の移住にかかわる現行の政策を改革し、移住者が移住先で受けられる待遇を改善することによって、その可能性を十分発揮できるように支援することができる。

移動は一般的に、移住者とその家族、出身地、さらに移住先のコミュニティに利益をもたらす:
貧困層ほど移住によって受ける恩恵が大きいが、彼らの移動は最も限られている。移住者は出身地よりも人間開発の達成度の高いところへ移住し、同行した家族、そして出身地に残された家族も含めて、所得の向上、教育や保健の機会の充実という形で移住の恩恵を受ける。移住者は、移住先の人々にまったく、あるいはほとんどコストをかけることなしに経済生産を増やす。

移住にかかる費用は高く、手続きは複雑である:
移住の手続きや費用は、移住者、出身地そして移住先のコミュニティに代償をしいる。移住者はしばしば重大なリスクに直面したり、困難な状況に立ち向かわなければならない場合が多く、とくに貧しい人々は移住のために最も重い負担をしいられている。受け入れ国のコミュニティは、賃金の引き下げや過重な行政サービスのプレッシャーに直面しており、政府は適切に対応する必要がある。

移住者の受け入れ国の懸念は誇張されている:
移住を恐れる必要はない。一般的に、移住者は地元住民から雇用を奪い、行政サービスにかかる負担が重くなるという懸念があるが、この懸念は誇張されている。未熟練労働者を含む移住者たちは、概して経済生産性や社会の多様性に貢献する。

人間開発報告書2009「障壁を乗り越えて―人の移動と開発」国連開発計画(UNDP)
http://www.undp.or.jp/hdr/global/2009/index.shtml

*1:海外に移住し定住した日本人および彼らの子孫をさす

*2:日系4世の場合は来日する時に未成年で未婚、親に扶養されていることが条件

*3:90日以上滞在予定がある外国人は外国人登録手続の必要がある。