ナマモノのルーツ

id:XQOさんでふれられてるナマモノ(生身を対象とした倒錯妄想)であるが、70年代英米ロックと商業漫画のクロスがあってパロディ漫画表現が広がったと思う。ターゲットが生情報が入りにくい外国ミュージシャンであることと、そうであるから人権コードその他気にならない(相手に察知されることは絶対ない)でいられるという条件の元、育まれていたものと推測する。
さて、それではロックと「倒錯妄想」はいつ結びついたのかといえば、西欧文化の中で黒人ブルースに憧れた白人というロック本来のもつベースがその芽を含んでいたのではないか。ハンブルグ時代のワイルドさを去勢したビートルズの世界的大ヒットなど。酒とドラッグと女というイメージの一方で、バイセクシュアルが強調されだした、60年代後期のサイケデリックムーブメントでそれは全面開花する。その流れは70年代に入ってグラムロックに色濃く引き継がれるが、サイケブームで解禁になったそれは、ハードロックやプログレッシブロックなどや、ボンテージやチェーンで武装しはじめたパンクロックにも共有される。
国内では、ミュージシャン&ローティ関係者と肉体関係を持つことを主眼としたグルーピー、共同体共有を目指す追っかけといったアクティブ派の他に、ミュージシャンを彼に夢見るミーハーの一角に、そうしたバイまたはゲイミュージシャンにのめり込むようになっていったファンが、自分もバンドをやることによって音楽と一体共有感を持つというバンド族のエッセンスを取り入れて、ミュージシャン同志の関係妄想に発展させていったのではないかと考える。
ビートルズにインタビューしたことが自慢の星加ルミ子が編集長の『ミュージックライフ』というのが70年代前後では国内最大のロック雑誌であり、それは、ミュージシャンのグラビア主体&軽い近況インタビューで構成されていた。その最後の方のページに見開きの読者コーナーがあり、読者イラストや、パロディ小話などの投稿が乗せられていた。その内容は、徐々にエスカレートしていく。『ミュージックライフ』はクイーンをいち早く取上げ、グラビアを連発し、クイーン人気に火がつくが、最初はベイシティ・ローラーズと同等の女性向けビジュアル・バンドとしてであった。それに味をしめたML編集部は、アメリカの美形金髪ロンゲ・アイドルグループとしてエンジェルをプッシュし、いきなり武道館公演をウドー(招聘元)とかますが、チケット売れずガラガラでこれはみごとに撃沈(苦笑)。
そうした70年代中期、ロックパロディ漫画といえば商業誌でメジャーなものに、青池保子『イヴの息子達』『エロイカより愛を込めて』や、鴨川つばめ『マカロニほうれんそう』が思い浮かぶが、そのパロディネタはそした読者コーナーでささやかれたものを共有している=解る人が見ればより一層笑えるというカタチで導入されている。
さてロックにはバンド族と別に、プログレを中心とした蘊蓄思想批評族がある。「ロック批評」を掲げた雑誌『ロッキング・オン』もこの頃創刊されたが、ROもこのナマモノのターゲットとなる。70年代後期には「陽一さんのもしもし編集室」という渋谷陽一編集長まわりの連中のパロディ妄想読者マンガ*1が連載されたのであるから。
そう、別にゲイでもバイでも美形でもなくてもホモソーシャルなところ(同質社会に於ける非対立調和関係id:hizzz:20040424#p2)常にネタになる=「攻×受」構造主義ということであろうかね。。。

*1:エグイ倒錯関係ではなくほのぼのとしたもの中心