雇用の際の保険加入

ここで、基本をおさらい。
雇用の際に労働者が加入する保険には、大きく分けて「労働保険」と「社会保険」がある。いわゆる「労働保険」といわれるものには、「労災保険」と「雇用保険」がある。労災保険労働者災害補償保険)は、事業主が保険料を全負担して加入するものである。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)
現行でも、パート・アルバイトでも概ね正社員の3/4以上の労働日・時間(1週間に30時間程度)あれば、加入できる。
保険料は、事業主と労働者(被保険者)との折半。だから、失業した労働者が国民健康保険に加入すると、前年度年収で換算された保険料*1が請求されて、驚くことに。また、パートタイム労働法改正審議のおりに問題となったように事業者負担が重いので、経営が苦しくなった中小企業では事業者全体で脱退してしまう例もよくある。
サイト確認したところ、テンプスタッフパソナ等、派遣大手は契約2ヶ月以上の場合、雇用保険も含めて社保加入手続きをしてるようだ。ただ、この時に問題になるのは、連続して契約が更新または新規契約仕事につければ良いが、ない場合には契約完了と共に社会保険は無資格となるので、労働者自身が国保か扶養家族としての世帯主加入保険へ加入手続きをとらなければならないし、仕事契約が決まり社保加入したら脱退手続きをとらなければならない。こうした煩雑さの中では、連続してではなく切れ切れに働いてる人の中には、無保険状態になってるケース、結構多いのではないだろうか。
前に国会議員の年金未納問題が話題となったが、彼等はこうした社保ー国保の切り替えの際の「空白期間」が生じたケースが殆どであった。ところが「未納」ばかりがクローズアップされて、こうしたシステムの煩雑さを解消するといった議論には現在のところまるでなっていない。


雇用保険
雇用保険は、正社員/契約/派遣/バイトなど雇用形態に関係なく労働者を雇用した時に事業主が、1週間の所定労働時間が20時間以上で、短期雇用契約でもその後の就労実績等からみて、1年以上反復して雇用されることが見込まれる場合所轄のハローワークに届け出るが、事業主と被保険者が分担して保険料を負担する。たとえ短期の派遣やバイトでも、派遣や短期バイトで切れ切れでもさかのぼって通算で週20時間以上1ヶ月14日以上×半年働いていれば失業手当受給資格となるので、さかのぼって加入することが出来る(後注:その後2008年秋に財政削減で雇用(保険支払い)期間「1年以上」に需給資格は改悪されたが、景気悪化で元の半年に戻そうとする動きがある。2009年1月現在)。この「遡及適用」は、2年前まで遡ることが可能であるので、勤務シフト表やタイムカードの写しや給料明細等の勤務実績を証明するものは絶対にとっておくこと!!!!それさえあれば、後から自己負担分(給料の8/1000)を支払っても、支給されうる失業保険料は大きい(最低、頭割り日給額の5割×90日)ので、大切な労働者権利であるのだが、どうも労働者個々には浸透してない。ましてや、派遣やフリーターにも権利があることを知っている人は、少ない。よらしめ、知らしめないことで、失業保険給付の増大をおさえてるのかも、しれない。
雇用保険法 適用基準
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/koyouhoken/index.html
ただこの際、障害となるのは、あちこち短期バイトしてる場合である。派遣はたとえあちこちで勤務してたとしても、派遣紹介先が一括して雇用してることとなるが、1社週20時間に満たないバイトを平行してかけもちしてたりする場合は、労働者個人実態としてフルタイム以上働いてるのにもかかわらず、1社1社に於いては雇用保険適用基準の網からモレてしまう。そして、前に書いたように最近のバイトは、能力に応じて時間&賃金シフト采配をしてたりするので、単一賃金×時間で稼げなくなってきている。id:hizzz:20041224#p1 と、いうことは、単純労働に甘んじると長時間働かなければならないという仕組みに追いやられているのである。しかし、元々、正規雇用を想定し、事業者に手続き代行させたこの制度では、こういう人たちは想定外となるのである。事業者主体から一刻も早く労働者主体にシステム変更すべきである。社会保険が家族主体から個人主体に向かっているのと同じく、こういうものこそ、労働者一元化すべきものである。
パートタイマー労働法改正案でパートタイマーに社会保険適用するか否かで話題となっていたが、なのにこれは放置。ひよっとしてこれは事業者の採用募集を扱う所轄部署と、労働者に失業保険を認定分配する部署が一緒なのが問題なのかも知れない。一応職業安定所長の裁量権として、所轄の各事業主に指導監督義務があるらしーのだが、所轄外のあちこちの事業主を点々としてる1個人よりも、日頃つきあいのある所轄地域の雇用主の安定採用関係といったことにどうしても目がいってしまいがちなのお役所セクショナリズムが発生しているのではないだろうか。
民主党最低賃金を全国一律1000円にする案を提出するようだが、これは選挙用アピールのとってつけたような非現実な提案。そんなんよりも現労働者のセイフティネットとしての雇用保険の運用システム自体には、どーして誰もメスを入ないのかな?>いでよ、非正規雇用運動な皆様!
最低賃金1000円以上に 民主、格差是正法案を来月提出
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20070217&j=0023&k=200702176382
ワーキングプア」実態把握、前向き姿勢一転「やらない」
http://www.zakzak.co.jp/top/2007_02/t2007021635.html
そもそも厚労や税務でなく、経財担当が個人収入別の労働実態把握をしようというのには、調査網自体からして無理があるのだろう。

*1:自治体によって料率に格差がカナリある