日本人の価値観最前線は下がりめ現状維持

…とゆー訳で、「国民性の変遷」調査、探してみた。其の名もそのものズバリ、統計数理研究所の国民性調査委員会が、1953年から五年おきに同じ設問をする「日本人の国民性調査」。最終調査は2003年。この世論調査は日本が先行しており、のちのアメリカGSS(General Social Survey)が始まるきっかけともなったものであるという。
日本人の国民性調査
http://www.ism.ac.jp/http://www.ism.ac.jp/~maeda/KSJapan/index.htm
1953年の調査開始から73年迄は「伝統的な意見」が減り民主的意見が増えたが、次の78年には一時的に「伝統回帰」が見られた。調査開始以来一番の変化は、女性が女性であることを積極的に楽しむ方向の回答が一貫して増加中、時代の変化を一番受け続けている。1970年前後から日本人の「家族志向」が高まっている。仕事以外でも面倒見の良い人情課長は最近ではやや落ちてきてはいるものの高い支持を得ているが、しかし、職場での濃密な人間関係は年々敬遠されつつある。生活水準は83年以降下がりっぱなしであれど、くらしむきに対する満足度や評価は、変化なし。経済や心の豊かさといったことには、93年にがたんと下降してそのままであり、将来の見通しは暗い。

国際比較調査データアーカイブでは、日本/イギリス/フランス/ドイツ/アメリカ/オランダ/イタリアの7ヶ国価値観調査や、アメリカ西海岸日系人、ホノルル住民調査がなされている。その中で「東アジア(北京/上海/香港/台湾/韓国/シンガポール/日本)価値観国際比較調査:2004年日本A・B調査」2004年度からちょっと面白い項目をピックアップしてみた。
生き方は「人に迷惑をかけないように暮らすこと」68.7%で、その人生の考え方としては「人生は自分で切り開いていくものだ」78.0%。「たいていの場合はっきりとした善と悪はなく、その時の状況による」66.4%。
身内と他人の境目は「家族や親戚は身内だが、それ以外は他人」40.8%「家族は身内だが、それ以外は他人」26.4%「家族や親戚、親友や恋人は身内だが、それ以外は他人」21.1%、恋人の位置が極めてビミョ〜。「個人の権利を認めるためには、公(公共)の利益が多少犠牲になることがあってもしかたがない」40.9%、その反対「公の利益のためには、個人の権利が多少犠牲になることがあってもしかたがない」39.6%で、公ー個の関係はほぼ拮抗。しかし個人かグループかでは「従業員たちの個々の努力を集結して成し遂げられた時でも、彼らの仕事グループがグループとして報酬を受けるべきだ」54.1%でグループ優先だが、25〜29歳層だけ逆転して61%が個々に報酬を求む。安賃金でコキ使われ感噴出なのかな?良きリーダーの資質は3つ選択で「部下を公平に扱う」52.9%「判断力」47.6%「真剣に仕事に取り組む」46.8%「部下に尊敬され、好かれている」44.2%と、人間関係/姿勢重視。スジを通すか丸くおさめるかでは、「まるくおさめる」47.5%「スジを通す」44.2%だが、39歳以下では若くなる程スジ派が多くなる。イソップ童話の怠け者のキリギリスには「怠けていたのはいけないけれども、これからはちゃんと働くのですよ、といさめた上で、食べ物をわけてあげる」80.9%。
超能力や念力は「おもしろい・たのしい」21%「ばかばかしい・いない・ない」17.8%「いる・ある」17.2%なのに対して、幽霊や亡霊や人のたたりは「あってほしくない・いてほしくない」34.3%「ばかばかしい・いない・ない」16.4%「おそろしい・こわい」16.3%と、TV番組のお陰かそこそこ定着。「いままである特定の宗教にかかわらず、「宗教的な心」というものを、大切だと思う」62.8%。しかし、神仏は「あるかもしれない」43.1%「ない・存在しない」17.2%「ある・存在する」36.9%と曖昧な認知。死後の世界は「あるかもしれない」40.5%「ない・存在しない」33.9%「ある・存在する」17.3%。霊魂は「あるかもしれない」44.5%「ある・存在する」27%「ない・存在しない」21.3%と、神仏霊にきわめて親和性高いスピ派が多数。しかし祖先を尊ぶかといえば「普通」45.4%「尊ぶ」43.2%、年齢が下がる程尊ぶ者がへる。天皇制先ボソリ、か?
日本のすべきことは「環境問題への取組み」46.5%「地域紛争の解決、難民への支援や平和維持活動」29.1%。

数字で見る日本人の心ー「国民性調査」50年に軌跡 坂元慶行
http://www.soken.ac.jp/education/journal/no.9/doc/japaneseSpirit.pdf
NHK放送文化研究所,日本放送協会放送世論調査『現代日本人の意識構造[第六版]』
http://www1.doshisha.ac.jp/~ynishiza/HaifuPDFs/pc1-02_NHK2000.pdf
野村総合研究所社会産業研究本部『変わりゆく日本人―生活者一万人にみる日本人の意識と行動』
林 知己夫『日本人の国民性研究』
電通総研, 日本リサーチセンター『世界60カ国 価値観データブック』
国際社会調査プログラム:International Social Survey Programme
http://www.issp.org/
世界価値観調査:World Values Survey
http://www.worldvaluessurvey.org/