稲田朋美の筋ちがいのクレーム

各方面ではたかれている稲田朋美「政治的宣伝意図を有しない」との助成要件を満たしていない」というのがそのクレーム内容だが、その芸術文化振興基金の本年度版平成20年度助成対象活動募集案内(募集終了)の最後の規定部分をながめまくっても「政治的宣伝意図を有しない」とは、書かれていない。…とおもったが、id:gryphonさんご指摘の通り、案内の(資料4)にあった。ややこしいぜ。

募集案内本文
日本映画とは,日本国民,日本に永住を許可された者又は日本の法令により設立された法人により製作された映画とします。ただし,外国の製作者との共同製作の映画については,独立行政法人日本芸術文化振興会(以下「振興会」という。)が著作権の帰属等について総合的に検討して,日本映画として認めたものとします。

芸術文化振興基金助成金交付の基本方針
1.基金による助成は,芸術家及び芸術に関する団体が行う芸術の創造又は普及を図るための活動,その他文化に関する団体が行う文化の振興及び普及を図るための活動を対象とする。ただし,政治的,宗教的宣伝意図を有するものは除く。

しかし、文化庁役人がいうように、いかなる創作物でも「政治的宣伝意図がある」と解釈しようとおもえばそれはいくらでも可能なのである。従って、かかる映画が親日であろーが反日であろーが中立であろーが、そんなの関係ねぇ。てゆーか、政治コードにひっかかって宗教コードにひっかからないという判断も相当偏ってるしね。とまれ作品と解釈=批評は別もの。あ、そうそう、冬柴国交相が「もうやめる」とかいっちゃった道路特定財源助成金を受けてた道路ミュージカル『みちぶしん』、稲田議員的には、どーなんだろう?
芸術文化振興基金は、学術・奨学金など他の助成金事業と同じく芸術文化活動に対して助成しているもので、作者及び作品にお墨付きを与えるものではない。たとえば育英会助成金がその奨学生の学業成績や能力を保証するものではなく、学習機会を保障するものであるのと同じことだ。
マチュアからプロに渡って色々なランクに分かれてはいるが助成審査は、読めば判るとおり申請どおりの趣旨・規模&金額をつかって、適切に制作が執り行われるであろうか・執り行われたのかという書類審査に重点が置かれる。したがって、文化庁に試写を求めた時点で既に間違っていることを説得できないで、製作者にアプローチしてしまった担当役人もヘタレ。稲田朋美は自分が試写要求したことを否定して、逃げまくる体たらく。>ほんとはあった稲田議員「靖国」公開前の試写要求
このようなドキュメンタリーの他には、民間需要が少なく自己採算の取れない、演劇・伝統芸能コンテンポラリーアートなど多くが、この助成金を資金源に活動を行ってる。無論助成金漬に対して「芸術の自律性」=自主独立という方面からの批判は業界内でも根強くあるので、平田オリザ芸術立国論』のように芸術=政治と一体化した「国策芸術」をぶちあげる超ヤバイ方向に向かう人もいる。
助成金はこのように作品制作につくものと作家活動につくものとの2種類ある。李纓監督は、海外招聘芸術家研究員(新進芸術家海外留学制度及び新進芸術家国内研修制度)として来日したとか。当然この逆もあるので、意欲ある方は次回トライされたし。メディア芸術とか分野によっては結構アキあるみたいなので、申請書の書き方次第*1
海外招聘芸術家研究員がこしらえる作品・著作物も事業助成金も、なんらその著作品質を保障するものではないのにもかかわらず、それを一種の「箔付け」として広報宣伝に利用している事実は過去沢山あるし、「文部省選定映画」と混同してる向きも多いのであろう。

*1:平成19年度 新進芸術家海外留学制度 募集案内(終了) http://www.bunka.go.jp/1bungei/pdf/19_kaigairyuugaku_boshu.pdf