流動化とダイバーシティ

グローバリゼイションの波は、企業にとってもその雇用形態を変えざるを得ない。顧客が多様性をもっていれば、そりゃあ対応するほうも同質均一をもって良しとする訳にはいかないのだ。国内企業でも昨今の企業買収の波でトップが外国人経営者に変わり、外国人雇用者が正社員として国内オフィスで働くケースも多くなった。又、雇用形態も多様化した。そうすると、いかにも日本的な阿吽の呼吸的集団業務慣習は通用しにくくなる。
これは、グローバリゼイションの効果だと見る。ワタクシの見聞きしたケースでも、様々な立場の従業員が働いている場所では各段にシゴトがしやすい。てゆーか、まさにワタクシ自身がそうなのであるが、旧来的組織でグローバリゼイションがなかったら、そうした場所に入り込むこともシゴトして成果出すことも不可能であったのは事実である。
上記にカキコしたCSRの中には「ダイバーシティ」=多様性の受容(Diversity & Inclusion)という概念がある。これは、性別・身体・年齢・出自・人種・価値観・性格等の外見や個性の多様性容認・担保し、それを活かしていく組織づくりが求められている。従来組織へのこうした個人特性に関わる問題としては、セクシュアル・ハラスメントへの取り組みがあるが、セクハラが性差別解消という目的に対して、ダイバーシティは個体差を均一企業風土に慣らすのではなく、積極的に個体差の活用を企業戦略として位置づけようとする試みだ。川口章『ジェンダー経済格差』では、革新的企業での女性活用例が挙げられてる。が、これは現実にはそう手ばなしで喜ばれることでもない。
基幹的職種にも中小企業では女性が活躍してる例はあるが、問題は賃金である。中小故に社内での比較はしにくいのであるが、他企業役職と比較すれば、大抵女性の方が低い。妻帯男性にはもれなく付く家族手当・住居手当等は、女性には付かないことが多い。元々平均賃金が安い有能女性を雇い入れることで、人件費を抑えることがいとも簡単に出来るのである。*1
ならば何故、母子家庭の女性雇用が進まないのか。これは人件費で見れば明白である。ワーク・シュアリングは、仕事の範囲やワークフローが明確でない多くの企業サラリーマン形態に於いては、仕事の引き継ぎというコミュニケーションがえてして煩雑になりやすく、結果人件費や経費が大幅にかさむからである。*2「ワーク・ライフ・バランス」というのが昨今の流行ワードであるが、なによりもワークフローの明確な職務形態にもっていくことが、突然の子供の不調で勤務中断しなければならない事情がある母子家庭ならずとも、家庭や自身の不調で勤務中断出来得ることが、長く働き易い職場であることにも繋がる。「ワーク・ライフ・バランス」=「ホワイトカラー・エグゼンプション」=賃金短縮→残業代一律カット(&外注・請負代カット)という短縮ではなく、適切な「ワーク・ライフ・バランス」へのステークフォールダー利益確保マネジメント、そうした見方がCSRとしての経営能力として、社会から事業者に問われつづけることであろう。
ダイバーシティ評価基準の実態と課題 http://www.nikkei.co.jp/csr/think/think_diversity.html

・個人というフィクションid:hizzz:20061022

*1:「女性雇用者の割合が高い企業は生産性が高い」とされる理由について、川口教授は女性の相対生産性の高さではなく、女性の相対賃金が相対生産性を下回っているとの解釈が正しいと論じています。女性の相対生産性は低いが、相対賃金はそれ以上に低いという見方です。その背景として、生産性に対する賃金への見返りの低い企業が女性を多く雇用する雇用機会の不平等性と、一般職女性の賃金を低く設定するコース制によってそれに見合った低い生産性の社員を生み出す逆マッチングの問題が示唆されます。>http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/08052301.html

*2:人件費はボランタリーで無しとする共同体などで多く誤解されているとが、このコミュニケーションの手間暇によるマネジメント経費=コスト高の無視・軽視である。