「格差」という言葉でごまかさる「貧困」

ワタクシは、常々「ニート」だの「ワーキングプア」だの「経済格差」だのという言葉に隠された欺瞞がもう鼻についてならない。ニートワーキングプアネットカフェ難民は、全て若年学卒無業・低賃金者問題に収斂してしまい、「経済格差」という場合もそうした問題若者と若年学卒就業者との生涯賃金格差に始終する始末。でも、ニートの本来の意味は若年低学歴無業者のことだし、住所不定ネカフェ難民は若年よりも中高年の方が利用割合高く、ワーキングプア生活保護ライン以下の就業者で生涯賃金格差と共に、なによりも男女格差の方が大規模で長く続いている問題である。
度々カキコもしてきたそれはどういうことかというと、アッパーミドルクラスが下層階級へ下落する不安を「トリアージ」的な例を出して世間に煽ると同時に、自分たちこそがさも、貧困下層階級であるがのごとくな言説によって、それよりもずっと貧困だった人々の更なる貧困を見えなくさせていることである。多様なライフスタイルにそぐわない均一な制度を告発するのに、それを均一な格差状態に代表させてしまうクローズアップの暴力といっても良い。確かにそれによって問題は表面化したかもしれない。しかし、以前カキコした通り、クローズアップされた派遣問題=若年就業者の解消ということに、政府も野党も政策集中してそれで済まされようとしている。>id:hizzz:20080427

遺児母子家庭の母親の年間勤労所得と一般のサラリーマンの年間勤労所得の推移について、控除前の金額で見てみますと、1998年の母親の所得は200万円で一般の43・2%。それ以前の調査でも、母親の勤労年収は一般の約4割台を維持していたのですが、年々減少し、2003年には131万円と一般の29・6%にまで落ち込みました。2004年にやや回復したものの、2006年は137万円で一般の31・5%にすぎません。
月給の手取り額の平均はわずか12万円で、2002年9月調査のときの13万600円から1万600円減少しています。また、2007年における45歳〜49歳の一般女性の、ボーナスを除いた月給の平均、24万2200円の49・5%と半分以下です。

遺児の教育環境は極めて劣悪です。26・3%、4世帯に1世帯もの子供たちが、家計や学費のことを考えて進路を変更しています。

政府に対しては、「格差問題」という言葉でごまかさず、「貧困問題」としてとらえ、真正面から取り組んでほしいと思います。2007年4月から遺族年金や生活保護母子加算がカットされましたが、母子家庭等への自立支援プログラムが十分に機能する前にそういうことはするべきではありません。また、日本の教育費、例えば大学の授業料は、OECD加盟国の中でも日本は、オーストラリア、アメリカに次いで高額です。裕福な家庭の子供でないと教育も受けられないというこの国の未来は一体どうなってしまうのでしょうか。その他、医療費や最低賃金の問題など挙げたらきりがありませんが、政府は、遺児家庭だけでなく、すべての社会的弱者が、憲法にうたわれている、文化的な最低限度の生活を営み、教育の機会均等が保障されるための施策に力を注いでほしいと切望します。経済、すなわちお金のために、人間らしい生活を犠牲にするために、私達はこの世に生まれてきたのではないのですから。

あしなが育英会理事 工藤長彦 視点・論点「母子家庭は今」

旧来の男女賃金差別に加えて終身雇用扶養家族制度・性別分業の谷間である社会のエアポケット、母子家庭問題は既出であるが、だからといってこの問題はなにひとつ解決していない。解決していないまま、「待機児童ゼロ」などというむなしいスローガンだけが飛び交って*1、昨今のワープア旋風=若年学卒者貧困問題に呑まれて埋没している。こうした「ワンフレーズ・ポリティクス」ありきなメディア・ナショナリズムid:hizzz:20070109#p3に関しては、パフォーマンスよりもクオリティが問われなければならないのではないだろうか。

*1:公的保育所に入所するには就業先の証明書を要求されるが、現実的には求職時から保育問題が解決していなければ求職活動すら不可能という、ばかばかしさ。