しない偽善より、する偽善

昨今さかんに報道されている「仕事・住まい両方同時に喪失する派遣契約切」なんてのは、上記10原則の頭から違反してるもんな。まさに人権問題にほかならぬ。
年末年始の「派遣村」バッシングで、元派遣とそれ以外(長期ホームレス)を区分けしてうんぬんする論調があるが、「無職で食えない」「定住居ない」という現状は、元職がなんであれ変りない。持ち金を使い果たしてしまって生き延びるとすると、短期から長期ホームレスへとなる可能性大な人々である。しかしボランティアした田中康夫まで、総評系組合の現場仕切りで「政治動員」されてることをうんぬんしているが*1、それを言うなら新党日本民主党と政策協定を結んでいるんだから、民主党の政治基盤である潤沢なる政治資金をもつ連合・自治労に対して、協力要請をしまくらなかったのは何故?元派遣でない長期ホームレスには、お得意な口癖の「ノブレス・オブリージュ」は、無しってこと?例えば、前を歩いていた人がなにか落としたら、拾って差し出すように、なんであれ、今困っている隣人を助けられることが自分に出来るなら、そうするというのは、高貴でもなんでもなく、職業感や倫理感の前のそんなに肩肘はったハナシではないことなのに、それがなんでこんなに「猜疑心」でこわばってしまうのであろうか。冷え冷えとするのは、なにも季節のせいばかりではない。
各統計で見ても、既に昨春から景気が冷えて来ていたにもかかわらず、id:hizzz:20080610で書いた通り、政府は財政健全化一本槍で社会保障費を圧縮削減する愚挙に出てて、もともと薄い社会的セーフティネットを更に薄くしてしまった。野党も「登録型派遣問題」=製造業派遣ばかりに執着して(与党は派遣のマージン規制に踏み切るようだが)、しかし労働問題=派遣問題と、手の打ちやすいトコ=安全パイばかりさんざっぱらメディアにクローズアップさせといて、これだけ手間暇かけました!と政治宣伝に使っているところは与野党共、同犯だろうに。そもそも政府は1965年以降「貧困」に関する調査を行っていない。全体的状況が悪化しているにも関わらず、大々的に「貧困」調査が再開される気配も要請も、どーもない。
ま、とかく労働組合は、総評系と連合系のどっちにつくかでモメたり、小世帯なのに気張って全方位目指し組織形態ばかり大がかりにしてしまってマネジメントなく小回り利かない傾向にあるが、実務系はどっちにも付いて、案件を抱え込みすぎないで小回り良く専門特化することが、これから生き残る手段だろう。いや、この際つかえるものは自民であろうが、なんでも使うという実務がなさすぎたのが、この手の理念が先走った運動だったので。そういえば学生運動全開のその昔、貧民救済活動って創価学会の十八番だったのだが。。。
派遣村」で生活保護申請した者全員が需給決定したことがニュースになる位、生活保護受けるのが困難だった。「派遣村」について石原東京都知事は、「本来国がやるべきことを東京都が肩代わり」といばっていっていたが*2、例えば山友会が常設でやってる墨田川添いの毎週の炊き出しが「近くに児童公園もあってクレームが来ている」ということで東京都が中止要請して、中止になる。が、第一そんな理由自体おかしいだろう?では代わりに、東京都がなんかしらするのかといったら、それも無し。報道されないその影では、相も変わらず、見えなければよしの日常。
もう何度も書いてるが、製造業派遣が専ら独身若年男性中心の問題とされている中で、派遣形態が出来る以前から国連女性差別撤廃委員会報告等やILOで差別是正勧告されてる位、男性=正社員(総合職)、女性=社員補助・パートとして女性労働者の平均年収はずっと260万円前後で推移している(最初から格差ついてる初任給から殆ど上がらない「一般職」賃金体系)「コース別雇用制度」は上下2重構造なのである。男女雇用均等法の恩恵は、「総合職」にありつけた一部の大卒女子のものでしかなかった事実を、政党であろうが労働組合であろうがこれまで誰も正面切って取り扱おうとはしなかった。高卒5年大卒3年と言われてた昔と違って30過ぎても「居座る」=定着率が高くなった一般職女子社員を順次派遣に切り替えて、3年の派遣制限規定で新規交替。後は派遣会社を盾にして、年配が派遣紹介されないように要求し、建前はどうあれ派遣の大多数を占める専門技能職でない「ファイリング」職を中心とした常用型女性派遣の多くは内実年齢でカットされていた。ちょっとでも企業に関わっていれば誰でも簡単に推測がつくそんな派遣状況だったのに、男性が女性並みの賃金になった派遣が増えその職が無くなったとたん、与野党あげてのこの騒ぎよう。。。今更登録型派遣≒製造業派遣禁止って法案成立させても、その職事態が少なくなっているのだから、無意味。むしろ年齢不問の登録型で今までかろうじて生計をたてていた中高年に追い打ちをかけるようなものでしかない。「派遣村」に来ていた者も若年層より中高年が多かったようだし。当然派遣切で住まい喪失している女性も多くいる筈。この寒空の下、どう耐え凌いでいるのであろうか。心が痛む。「女性と貧困ネットワーク」が立ち上がっているようだが、「道路わきにダンボールを敷いて、鍋をつつく」のは内輪数人の様子で救世軍の「社会鍋」とは違うようで、時節柄に連動した外にむけた社会提言・救済活動などは、Blogにはまったく記されていない。が、今後に期待するとしよう。

厚労省、12日以降61人分の宿泊しか責任持たず…派遣村実行委「国は全ての労働者の職と食の受け皿を用意すべき」
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1231640633/
・「自己を確立する」という近代プロセスの欠落 id:hizzz:20080610
・貧困のツケを払うのは誰か id:hizzz:20080427
職業訓練ICカード化 id:hizzz:20070218#p2
・雇用の際の保険加入 id:hizzz:20070218#p3

*1:2009年1月5日TBSラジオ『アクセス』>http://podcast.tbsradio.jp/ac/files/actk20090105.mp3

*2:石原知事、派遣村問題で国に苦言「大事な現場を知らい」>http://sankei.jp.msn.com/politics/local/090105/lcl0901051820002-n1.htm