視野の範囲

人間の網膜の中央から周辺に移動することは、進化の時間を-もっとも高度に組織化された目から、影の動きを検出するだけの原始的な目へと-さかのぼることに等しい。
R.L.グレゴリー『見るしくみ』

目から入った光が、眼球の奥の受容細胞に取り込む(受け入れられる)には、その光の像を裏かえししてるというのは、基本的なハナシである。網膜には桿体と錐体の2つのタイプの細胞があり、周辺にある桿体細胞は明暗を、中心窩に密集してる錐体細胞は色相の波長に感度する。と、ゆーことは、暗いトコでは、視野の中心よりもちょとズレたトコに焦点を合わせてものを見れば、見えてくるということになる。
見えている範囲は一体どのくらいあるのかといえば、とりあえず人間は、水平で約180度、垂直で約130度を視野としてるのだが、それを一度に取り込んでるのでは毛頭ない。焦点が合ってる範囲はわずか2度(中心視)、周辺視は60度という。
ものを見るとは、そのわずか2度範囲を一点凝視してるのではなく、視点を走らせて「スナップショット」を次々と取り込んで(逐次処理)、脳に送り、脳がその像を繋いでいる(並列分散処理)。中心視に対して周辺視の範囲が広いのは、動く対象物の素早い検知(動体視力)が生物の生存に関る進化的過去の遺産ではないかと、R.L.ソルソは推察する。