スタイリッシュな俗人

夫は30歳。大学を出て、叔父がやってる会社のリーマン。夜は勉学と称して必ず机に向かうが、何カ月たっても読み終わらない分厚い経済学の洋書*1がおいてあるスタイリスト。
叔父の親友(会社の上司でもある)の妻からはからかわれつつも世話になる。その紹介で半年前に結婚した妻とそれなりの生活をスタイリッシュに維持しようとするが、自前のシノギでは足りず、実父に毎月援助してもらう始末。
叔父からは「日本中の女がみんな自分に惚れなくっちゃならないような顔付をしている」と、友人からは「腰は始終ぐらついてる」と、更には妻側の身内に迄「始終御馳走はないかないかって、きょろきょろ其所いらを見廻してる人」とまでいわれてる。
誰からも愛されたいと思い、そして「女は一目見て男を見抜かなければ不可い」と初心な従姉妹に講釈をたれる妻23歳は、しかし自分の容姿にはあまり自信がない。が、そんな自分だからこそ、この結婚(=選ばれ選んだ自分)は完璧であり、そんな自分の熱愛に夫は全力愛で返してくれるはず、と指に輝く指輪を眺めつつセレブな意志を強固にして満足感に浸ろうとする。
あー、いる、いる、そゆの。あまりにもありがちな虚栄心にまみれた俗物二人。
その完璧な結婚は実は、夫には別に結婚寸前の恋人がいたが逃げられてしまって急遽周囲がおぜん立てして成立したものという事実を妻ダケは知らず、「愛し愛されて当然」という誇りが甘えに見える周囲がよってたかってちょっかいを出し、親戚関係者一同わーわーひと悶着…というハナシ*2。これが夏目漱石の未完の大作『明暗』のスジ。

*1:これはマルクスだろーな

*2:懸命にしずかちゃんであろうとしてコジレる某所のマサコのハナシで…はない(苦笑)