Beautiful Japan

美しい国」といったら、安倍晋三の政治コンセプトだかアイデンティティだかスローガンだかキャンペーンだかを示しているのが世間では一般的である。が、しかし、この手のネーミングは別に安倍オリジナルでもなんでもない。「美しき日本(Beautiful Japan)」というキャンペーンは大正〜昭和にまたがって国をあげてとりおこなわれてきた。
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前に「日本化を纏う日本」id:hizzz:20050505ということで、絵はがきに見る日本イメージをざっくり紹介したが、おとぎの国=ジパングを継承したジャポニズム*1が西欧近代でもてはやされてるのを逆輸入して政府は、外貨獲得の有効手段として外国人観光客の誘致に本腰をいれだす。丁度、定期航路等が整備され発達した交通機関も相まって冒険家のものだけではなくなった旅行が欧米ではブームとなり、沢山の旅行記が出版され、それが日本を含めた「オリエンタル」地域へのさらなるロマンをかき立てたのである。それだけでなくここには日露戦争以後高まった黄禍論を、近代化にいそしむ「人畜無害」な浮世絵の国へのイメージ替えという意図がある。そのラインでも、安倍の「美しい国」は似てるのかも。
1912年(明治45年)に鉄道/船舶/ホテル業界があつまって旅行斡旋業「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」が設立。大正期には、各地の人々や産業を写した映画「Beautiful Japan」が、ロシア系米国人監督で製作された。http://tokyocinema.net/BJm.htm
上記掲載ポスターは1930年鉄道省に設置された国際観光局の基、ジャパン・ツーリスト・ビューロー日本郵船、帝国ホテル等の有志で製作されたもの。米*2に7000枚、欧州に2000枚配布。日本美=富士山/桜/芸者のプロトタイプは、このように西欧ジャポニズムに乗っかった官製国策イメージだったのである。
VISIT JAPAN CAMPAIGN 国土交通省 http://www.vjc.jp/

*1:クリスチャン・ディオールの今年の春夏コレクションは、ジャポニズムhttp://www.style.com/fashionshows/collections/S2007CTR/complete/thumb/CDIOR

*2:カリフォルニア等の日系移民排斥運動の高まりで1924年に排日移民法が制定され日系移民禁止されていた。