made in Japan

上に書いたように戦前の「美しい国」キャンペーンは外貨獲得という経済的動機が主であった。では戦後は「戦争放棄」がメインコンセプトとなっていたかといえばそうではない。そういう抽象概念=信仰を掲げることこそを、放棄したということはいえないだろうか。
戦後日本のアイデンティティ&実績を言うなら経済立国に他ならない。士農工商ヒエラルキーが抜けない政治左右派の思索はいつもそれを排除するが、戦後賠償代わりのバラマキODA外交は、最大最強の安全保障でもあったのである。また、直接取引きの許されてない軍事対象品規制があった80年代冷戦の時代(COCOM 対共産圏輸出規制)に於いてソ連は米国に継ぐ、日本工業製品の上得意先であった事実がある*1。made in Japan、そういうカタチ=「有用/無用」の在り方は「エコノミックアニマル」といわれもするが、戦後国としてのアイデンティティや美学を封印することが結果的に「正義/平和」などという1ヶ所からふりかざした抽象理念よりも明らかに多元的世界で部分共生可能な知恵だったのではないだろうか。とかく思想政治を振りかざし志の高さを競う前に、観念より実用*2というこうした地べたのやり方の有効性を身の丈評価してくべきではないだろうか。
と、これは、id:kmiura:20070125#p2で「日本の企業が中東に進出しやすかったのは、日本人に対するポジティブなイメージがあったからだと思います。」と呼応されている。
第1回参議院政府開発援助(ODA)調査派遣報告書
http://www.sangiin.go.jp/japanese/koryu/h16/h16oda-houkoku01.htm#mokuji

*1:商社と第三国を経由して取引きをしていた工作機メーカー東芝機械社員が米国内でFBIにおとり捜査で逮捕された事件があった。id:hizzz:20040520

*2:コンセプチャル・ハイアートより実用マルチカルチュラリズムということで、オタクやファッション等の現代サブカル文化も含む