貧困には縁遠い教育

世の中に貧困問題があるということは認識していても、結局子供のころから同類項でつるむ「半径ワンクリック」な同調性志向な共同体だけで完結してしまう暮らしをしていると、自分達以外のライフスタイルがたとえ目の前で展開されてたとしても、見えないし分らない。80年代以降、生活そのものが細かくセグメントされた中で営む棲み分けが進んだ故の社会俯瞰のなさなのだろう。
例えば、高校進学率97%超なのであるが、それは決して100%になることがないという事実。大学進学率が半数になり高卒と同等の就職機会しか得られていないワープア同士として、大卒と高卒の間の壁を大卒側がことさらに無視し単純化ようとする傾向が、Blogなどでも目につく。自分が使う学費が幾らか、自己学歴に幾ら掛ったかすら知らない、気にしたこともない人は社会派高学歴者の中にも多い。文科省試算では、幼稚園から大学迄、公立なら818万円、私立なら1563万円だそーだ。今一度id:hizzz:20080520#p3のバランスシートをながめて欲しい。これから上記の金を20年以内に絞り出せというのだよ、政府わ。国も家庭も教育に金をかけないなら、残るは自己負担なのか?少なくとも「高卒」が最低限必要な学歴と社会的にみなされてるのにも関わらず、修学資金・奨学金は貸付があるのみ*1。しかも、大半の高等教育は10〜20代の内に取得しとかないといけない教育機関の仕組みで失敗は許されない、ときたもんだ。
サラリーマン養成機関のようなものだった学校がダメになりつつあると、佐々木賢『教育と格差社会』は端的に指摘する。昨今のメディアのとりあげ方も「大学出たのに日雇い」=なれて当然だったホワイトカラー・サラリーマン職につけなかった非正規雇用ブルーカラーという男性高学歴ワープア=中高産階級出自に偏向しているが、実際の日雇い者の学歴は、中卒〜高卒が大部分なのであり(&「日系」枠を含む外国人労働者)、高学歴ワープアというのは元々は大学院重点化等の教育政策問題なんで>岡本薫『日本を滅ぼす教育論議 』その玉突きがおしよせる労働市場で割りを食うのは、実は大部分が低学歴なんだという現状が隠れている。また「日系」枠で入国した人々の一部は、実際問題として文化・言葉の壁と貧困と国籍の狭間で「教育制度」からも取り残されたままで成人する者が出てきている。>未就学問題 http://www.kikokusha-center.or.jp/resource/ronbun/kakuron/36/36.htm

経済的な理由で平成19年度に私立高校を中退した生徒が少なくとも全国で407人(調査対象生徒数比0・21%)に上ることが、全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)の調査で分かった。10年度の調査開始以来、最悪を記録した。
調査は、全国の私立高校の約5分の1にあたる28都道府県234校、約19万5000人を対象に行われた。経済的な理由による中退率は、過去最悪だった16年度の0・19%(279人)に比べ0・02ポイント上昇、1校当たりでも1・74人と過去最悪だった。全国私教連は「他の理由により中退している生徒の中にも、家庭の経済的な事情が背景となっている者が潜んでいる」と、実際はもっと多いとみている。

私立高校中退率 経済的理由過去最悪に 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/life/education/080611/edc0806110820004-n1.htm

そんな低学歴と低所得と不利の関係をごまかしてはいけない。>労働運動

*1:奨学金返済の延滞率高い大学、公表へ…日本学生支援機構:2007年度に奨学金の返済を延滞した卒業生の割合が20%以上の大学は7校を数え、中には30%を超える学校もあり、学校も奨学金の返還を学生に促す責任があると判断した。3か月以上の延滞金は99年度末の1009億円から、07年度末には2253億円と2倍以上に増加するなど、毎年度、過去最高を更新し続けている。06年度の延滞者に対する調査で、ほかの借金返済を延滞の理由とした延滞者が約25%に上った。>http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080611-OYT1T00055.htm