人権と人間開発概念が目指すところ

人権と人間開発は、すべての人々に自由と権利と尊厳を保障するという共通のビジョンと目的をもっている。人権の課題と開発の課題は、冷戦によって分断され、平行線をたどってきた。今日この二つの課題の異なる戦略と伝統が歩み寄ることで、人間の自由獲得の戦いに新たな力を与えることができる。『人間開発報告書』は、人権を開発の本質的な一部とするとともに、開発を人権実現の手段であるとしている。本書は、人権が説明責任と社会正義の原則を人間開発の過程にどのようにもたらすかを示すものである。
20世紀における人権の発展は、めざましいものだった。しかし、重大な人権侵害は、あからさまな形で、あるいはひそかに執拗に続いている。本報告書は21世紀に向けた新しい人権課題を模索するとともに、社会正義を実現する政治経済的ガバナンスの大胆で新しい取組を提言する。広がりつつある地球規模の貧困格差を是正し、得に困難な状況にある人々や国を支援するために、次のようないっそう協力な国際行動が求められている。

少数民族の保護、権力の分立および公的機関の説明責任の確保を通じて、あらゆる人権を実現するための最適な政治形態として包括的民主政治を推進する。
●開発の目標としてのみならず、人権実現の中枢課題として、貧困撲滅を推進する。
●政府を対象とした説明責任モデルを、企業、国際金融機関、国際機関を含む非政府機関の義務にまで拡大する。
●人権実現に向け、説明責任の文化を築くために統計を活用し、不信感を払拭し、政治と行動の変革を推進する。

すべての国のすべての人々にすべての権利を実現するためには、すべての社会の中心的担い手が行動をもって示し、責任をもって取り組むことが必要である。2000年人間開発報告書は、人権闘争の軌跡をたどりながら、経済的、政治的既得権益に立ち向かうことによって、21世紀は人権は前進されるだろうと結んでいる。