スクラップ&スクラップのスクラップ

ネットでは、外山恒一候補の都知事選挙政見放送が話題。内容はアナーキーとか思想的にどうこういうより、しゃかりきにメンチ切る兄ちゃんのセリフ決まったねって感じ。皆一緒な80年代の『ビーバップハイスクール』のたわむれを思い出した。それが話題になるってことは、ああいう挑発芸風は今、ネット者の回りにはいないのか。。。「スクラップ&スクラップ」が可能なのは、堅牢な世界がベースにあってのこと。ま、そこは「当選したら奴らはビビる、私もビビる」という落しで、安心感。ネットでは早速、ニコニコ動画を中心として様々な動画バージョンが作られた。先鋭的なものは真っ先に解体消費され、無力化される。大体に於いて消費者主体のサブカルってそういう運動だったんだし。全てがフラットになるネットでそのサイクルは早まる。選管もドコに手をつけていーか困っているようだ。
だからこそ、一方でノリにおいてけぼりになった実存という塵埃が、ベタに溜まってきたりもする。
外山恒一さんの政見放送にBGMを付けた動画を大量まとめ
http://www.new-akiba.com/archives/2007/03/bgm_5.html

黒船待望論というファンタジー


両親とはソリが合わないし、車がないとまともに生活できないような土地柄も嫌いだ。ここにいると、まるで軟禁されているような気分になってくる。できるなら東京の安いアパートでも借りて一人暮らしをしたい。しかし、今の経済状況ではかなわない。
30代の男が、自分の生活する場所すら自分で決められない。しかも、この情けない情況すらいつまで続くか分からない。年老いた父親が働けなくなれば、生活の保障はないのだ。
私のような経済弱者は、窮状から脱し、社会的な地位を得て、家族を養い、一人前の人間としての尊厳を得られる可能性のある社会を求めているのだ。それはとても現実的な、そして人間として当然の要求だろう。そのために、戦争という手段を用いなければならないのは、非常に残念なことであるが、そうした手段を望まなければならないほどに、社会の格差は大きく、かつ揺るぎないものになっているのだ。反戦平和というスローガンこそが、我々を一生貧困の中に押しとどめる「持つ者」の怠慢であると受け止められる。

赤木智弘「「丸山真男」をひっぱたきたい――31歳フリーター。希望は、戦争。」『論座』2007年1月号

ここで、実家暮らしで月10万収入あるなら結構貯金出来るなーとか、一日1000円亭主からすればプチブルじゃんとか、月10万程度で東京の安アパート暮らししてる連中なんかだめ蓮あたりに結構いるしとか、特に身体問題ないなら首都圏で月10万以上稼げるバイトなんかいくらでもあるとかの実例や細かい具体策を示して前提を崩してみても、筆者及び賛同者にはヌカにクギなんだろう。
なんで前提を崩してみても無効にならないのかというと、この文の基になっていると思われる自己サイト文で筆者は、「金が欲しい」それはすなわち「人間として認めてほしい」という魂の叫びですらあるという。>「なぜ左翼は若者が自分たちの味方になるなどと、馬鹿面下げて思っているのか」
ワタクシの知古に、かって同じような境遇にあり同じような「呪詛」をしていた者がいた。だからか、赤木文にはデジャブ感を強く感じ、この文にショックを受けた「良識」派な方々の、自己承認には「連帯」を戦争には「革命」をという予定調和的ズレ具合(「グッとくる左翼」『論座』2007年4月号)の方には、嘆息喘息ぎみ。
斜にかまえたようなシニカル立位置をとりながら要所要所でベタにひっかかってしまう程繊細で芯は生真面目な知古がさんざん言ってたことは、金は欲しいが現在の余暇&消費生活水準を落すことは考えられないので、月10万の自活者に身近で接してしても自分的にはそれをすることは絶対ありえないし、自由裁量権のない結婚なんか最も遠いハナシということだった。口では色々いうその知古の示した生活サイクル内に於いては、遠い将来に渡る雇用継続と安定収入の見通しという点を除けば(しかし、たとえ「正社員」であろうとも、遠い将来のことなんか保障出来うる者はいないのだが)、趣味と生活はとても「堅牢」保守であった。おそらく、赤木さんの生活もとても「堅牢」なのであろう。だからこそ、戦争でも起こらないかぎり自己(が認識しうる現実)はゆらがない、と。無論、前回の『げんしけん』を引いたオタク話でも書いた通り、それは慣性のなせる技だったりもする。
しかし、戦争希望まで口にしないまでも、このような「人生の曖昧」にいつしかたどり着いてしまった人は、幼年期以降の道(親が用意したインフラ保護)がひとおおり終わり自己の素力が問い問われてくる30歳位ではよくあることだ。社会に於ける目指してる方向の自己限界性が見え始めたその時には、月収10万だろうが100万だろうが実はあんまり関係ない。いくらでもあった筈の選択肢を手放さざるを得ない人生の有限さに直面しなければならない時は何度でもくる。
ま、成長なきサエない自分の自己承認と、それと今後どう向き合っていくかってこと=自分のココロの反戦平和=広げたフロシキの畳み方=独自ライフスタイル構築を、社会的問題を訴える「政治的に正しい」自分にフロシキを置き換え広げることをオルグしてきたのが左翼的「良識」派な方々だったりしたのだ。そこに矢を放った赤木さんは、ネット上にいくつかアナウンスされた以後の対談をみるにつけ、そこに当事者的位置を見つけてくのだろうか。しかし、論壇左派に反響承認されつつあり反論を待たれる発言権を得た「持つ者」赤木さんに、ワタクシの知古は、多分めらめらとルサンチに燃えあがっていることであろう。いわれる「格差」とは、80年代賞味期限切れ問題「幻想の普通」、理念やスローガンをクローズアップすることによって左翼が回避しつづけてきた「オレという個の実存どーしてくれんの!」という抵抗のカタチ、左翼と赤木さんが呼応しあわなければならないことは、そういうことが主なのではないだろうか。>id:hizzz:20050804、id:hizzz:20050815

炸裂する趣味の消費生活

前回60年代オタク話で書いた通り、現在の貧乏は昔の「食うや食わず」貧乏とはまったく違う。赤木さんのブログでかいまみる3〜4年遅れゲームハード機購入暦を「貧困」とする上の世代は少ないのではないだろうか。しかし、当人は新製品を横並びで買い替え続けられないそゆ状態を、「情けない」とさえも認識してしまっている。これも、「良識」派な方々とハナシが噛み合ない一因でもあろう。自分が意識した瞬間からセカイは始まる者にとっては、その始まったセカイこそが全てであり、その前時代の「赤貧」や「戦時中」のことなんか知ったところで、今のセカイで植え付けられてしまった喪失価値感「格差」は変わらないのに、なおも過去世代のツケ「重荷」を背負わされるような目に合いたくないのだ。
通常、収入に対して収出が低く押さえて収入に見合った生活が営んでいければ、何も問題はない。ところが、昨今は最初に「人並み」=横並びありきを基準にしている人が多い。収入も横並びなら問題ないのだが、そうではないから経済問題が起きる。
WEBアクロス編集室『トーキョー・リアルライフ 42人の消費生活』という本がある。これは01〜02年の東京近郊の様々なライフスタイルをとる15〜37歳の1ヶ月の消費行動を記録したもの。ところが、なんと、わずか11人だけが黒字収支で、あとは赤字のオンパレード!になっているという体たらく。WEBアクロス上では、全国の2ヶ月分収支付消費生活が掲載中。現在184人。
Across消費生活
http://www.web-across.com/lifestyle/index.html
その中でも、酔い過しの金は持たない主義なのか打出の小槌を持ってるのか遺産がころがりこんでくるのか宝くじがあたったのか草むらで札束を見つけたのか、はたまたムジン君とお友達なのか不明ながらも、正/非正規雇用関係なく月の偏りなく大体1/3程度赤字収支!その中から、収入21万程の20代半ば正社員独り暮らし(家賃約6.7万)赤字を抽出してみると、エンゲル係数は外食費をいれても10%程で、「趣味・遊興費」「ファッション費」がそれを上回る「文化的」消費生活がぶりばり展開。うはぁ〜。中には自分で経済観念ないかも的感想をつづっている人がちらほらいるにはいるんだけど、、、アクロスはそゆがま口がフラワ〜な人が大好きなのであろう。
それの2番煎じ『トーキョー・フリータースタイル 東京に暮らす49人の「時間」と「お金」 マーブルブックス』は、03年に西東京中心の20代フリーター1ヶ月収支調査。中卒/高校中退は1名づつ、大学中退も4名しかいなくて、後は専門学校/短大/大学卒と、フリーターにしては学歴が高い。平均時給は1000円、月収入17万弱、支出14.5万強。中に赤字収支の者も11名いる*1が、差額3万以内で、いずれも実家住まいだったり恋人等と同居だったりするバックアップがありそうな境遇で、アクロス調査のようなベラボーな使いっぷりとは対象的。また、貯金は31人が、借金は11人がしている。さすがにエンゲル係数は16%弱と高くなるが、それよりもなお「遊興費」の占める割合が住居費に続いて高い。
金が欲しいなら四の五のいわずに稼ぎに行って、破綻しないかぎりはナニに使おうとも個人の勝手だとは思うんだが、為にする消費のようなお金の使い方を続けているのなら、そりゃあ、だんだんすり減って「貧乏」にもなるよなぁ。金と時間=人生は有限なのだ。
「日本社会で起業するため本当に必要な9つのモノ」という記事が書かれていたが、稼ぐにはまずお金の使い方を知らなければならない。お金を使うには「足し算と引き算ができるか」にかかっている。算数なんか誰だって出来るじゃんとうそぶく中にも様々なコストを想定した具体的足し引きの出来ない者は、学歴に関係なくビジネス現場にも結構いるのが、現状だったりもする。

*1:200万も借金がある鬱持ち28歳アダルトHP製作月収18万は、破綻きわまりないのだが、インタビューの呼応も日記も短く、詳細不明。