民意は何処な憲法論議

前日、憲法調査特別委員会で自公「強行採決」された国民投票法案が、本日、国民投票法案が衆院本会議可決された。
http://www.asahi.com/politics/update/0413/TKY200704130227.html
でー、安倍の横暴/右傾化と決まりのパターンでの抗議が護憲派からはわき起こっているが、しかし。まー、過去に書いたとり、憲法改正国民投票法案は本来は、まったく別問題。>id:hizzz:20070222、id:hizzz:20070223
そこでも書いたが、韓国では都合9回改正されていて、また改正するようなことをノムヒョン大統領はいっている*1。中国でも5回改定しており、「憲法改定」自体はアジアに於いても、一度決めたら絶対の「神聖不可侵」なものではない。わたしたちは、なにか硬直した堅いモノをおしつけられているような一本の憲法*2の両端で、改憲論争をしている息苦しさがある。改憲/護憲にかかわらず、一度、諸外国の憲法を平行して読んでみることをお勧めする。改憲論争外のそのほかの条項にしても、もっと国事情を反映してバラエティに飛んでいる。
諸外国における戦後の憲法改正
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0431.pdf

さて護憲精神での正論を立てれば、国民投票法案が制定されて初めて憲法内容が完全に主権在民のものとして機能しだすのである。憲法第96条にカキコしてあるのだし。したから、「国民投票法案」立法事態を否定することは、憲法内容を否定することになってしまう。
というと「今、成立させることはない」。じゃ、いつ成立させれば良いのか?右傾化してる時期は良くないのか。良い左傾化がいつ起こりいつまでも続くかということは未知数だし、それじゃあ永遠に未確定で現状維持という官僚答弁。新憲法制定されてもう60年になるのに、それでは完全な主権在民憲法に自分の意志をいっぺんも反映出来ない法律の上では手足を縛られて生まれて死んで行く国民が出つづけるのは違憲状態に変わりないダブルスタンダード。すると、「審議が尽くされてない」と言う。
では、どの位審議しているのだろうか、見てみよう。

*1:大統領改正などhttp://www.wowkorea.jp/news/Korea/2007/0308/10021963.html

*2:辻元清美憲法は、政権交代があっても揺るがない長い歴史に耐えうるものでなければなりません。」4月13日衆院本会議反対討論

国民投票法案の審議具合

1953年1月 自治庁「日本国憲法改正国民投票法案(抄)」作成。
http://www.k3.dion.ne.jp/~keporin/shiryou/kokumintouhyouhouan/04.htm
1997年5月 「憲法調査推進議員連盟改憲議連)」発足。
http://www1.sphere.ne.jp/KENPOU/
1999年5月 自民、自由、民主、公明・改革クラブの4派国会議員で「憲法調査会」設置合意。
1999年7月 「憲法調査会」設置のための「国会法改正修正案」など衆院可決成立。
1999年1月 衆参「憲法調査会」発足。
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kenpou.htm
2001年11月 改憲議連が、「国会法改正案」「憲法改正国民投票法案要綱」を発表。
http://www.k3.dion.ne.jp/~keporin/shiryou/kokumintouhyouhouan/f-01.htm
2006年4月 衆参「憲法調査会」報告書提出。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/houkoku.htm
2006年5月 自公「日本国憲法の改正手続に関する法律案」衆院提出。
2006年5月 民主党日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案」衆院提出。     
2006年9月 衆院日本国憲法に関する調査特別委員会(憲法調査特別委員会)」設置。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/kenpou-toku_f.htm
2006年12月7日 自公民、修正9項目で大筋合意。
http://www.sankei.co.jp/seiji/seisaku/061207/ssk061207000.htm
2007年12月14日 自公&民主案、衆院憲法調査特別委員会で付託審議、閉会中審査。
2007年1月25日 参院日本国憲法に関する調査特別委員会(憲法調査特別委員会)」設置。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/kenpo/index.htm
2007年3月22日 憲法調査特別委員会、中央公聴会開催。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/017416620070322001.htm
2007年3月27日 自公修正案、衆院提出。
2007年4月5日 憲法調査特別委員会、中央公聴会
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/017416620070405002.htm
2007年4月10日 民主党修正案、衆院提出。
2007年4月12日 憲法調査特別委員会、自公案採択。
2006年4月13日 自公案衆院本会議可決。

与党案・民主党案の原案/修正案、要項比較
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/gian-toku.htm#164shuho30-31youkoutaihi

ワタタシの感想としては、中央公聴会*1が貧弱だな。法案内容では、最低得票率は決め、ホントは3/4以上で可決するとかしてもっとシビアに多数決意見の裁可をとったほうが良いかと思う。
兎も角なんだかんだで、「一般的国民投票規定」を盛り込む(民主)か盛り込まない(自公)か以外は殆ど合意してるんだな自公民は。しかし、そしたらなんでソコでむたくそゴネたり、イキナリ決裂/強行採決になるんだよ。今回は最小限でともかく立法させて、次の改正時で追加してくというよくあるカタチをとれば、それで済むような条項内容だしな。自公だってそゆ先の約束とりつければ良いハナシなのに、ワケワカメ。

*1:公述人:浅野大三郎(中央選挙管理会委員長)、小澤隆一(東京慈恵会医科大学教授)、江橋崇(法政大学法学部教授)、百地章日本大学法学部教授)、庭山正一郎(社団法人自由人権協会代表理事・弁護士)、小林庸平(特定非営利活動法人Rights理事)、田辺初枝(主婦)

みんな「政局」が好きすぎる!

てゆーか、誰も法案のコトなんか考えてナイのだ。

●報道された攻防の流れ(2007年)
1月26日 安倍首相、国民投票法案の今国会成立に強い期待感表明
2月15日 自公、法案を憲法記念日までに成立させる方針を確認
3月 8日 「対決姿勢のほうが得策」民主、法案成立に難色を示し出す
3月31日 小沢&鳩山、独自修正案を衆院提出する方針確認
4月 1日 中川政調会長、民主反対でも衆院通過強調
4月 4日 菅代表代行、自公修正案に反対表明
4月10日 自民、民主との修正合意断念
4月11日 野党各党、委員長職権での12日委員会開催に一斉反発

年末の法案の運びを見て、支持率が落ちてきた安倍が、ここ一発「実績」をこさえて強いトコを見せようと戦後レジュームの転換の一環として「憲法改正」を主張。すると、今迄、迷走する党内事情をすべからく外「政局」に向けることで延命してきた小沢は、来る選挙の年に向かって安倍政権に華を持たせまいとして、ゴネはじめる。しかし今迄修正案に協力してた手前、明確に反対できない。無理難題をいっても「強行採決」してくれた方が、改憲〜護憲取り揃えてる党内事情上都合が良い。なおかつ、都知事選等での迷走を忘れさせる大きな争点として、大いばりで野党共闘出来る。さらに、「3年後」憲法改正法案が出た曉には、いっそうプレゼンスが示せる*1胸算用も。無論、安倍政権にとっては「断固とした指導力」強さをアピールしつつ法案通過という大成果が出せる。蚊帳の外で出番なかった社民党共産党にとっても、これで護憲&一貫した「政治的正さ」をアピールできる場が出来る。また委員長が、質問途中で審議を打ち切り甲高く抗議して委員長席に詰め寄る辻本清美というオイシイ絵づくりに協力?しちゃうんだわ。政策論争よりも政局論争の方が大好きなマスメディアは、ここぞとばかりに活き活きと総力取材して見せ場を売りまくる。
かくして全ての思惑&利益が一致した、決裂茶番劇。それこれも全て、夏の参院選挙の争点づくりの為。あーあほくさぁ。<シゴトしろよ
ともかく、主権在民とか憲法は、こうやってよってたかって無意味化されて形骸化されてどんどこ実態とズレていくんだよなぁ。

これが政権交代可能な野党か…!? 長島昭久
http://blog.goo.ne.jp/nagashima21/e/aef5672e4e6e78bf64f5ccdd7c32e60b

*1:表面的にはコマが進んだようにみえるが、自公民修正合意協議時よりも、憲法改正手続き(第96条「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」)としては、自公採決では実際上後退したという見方。今後いかなる改正案が出ようとも、「国民投票法案」採決時に先のぼって文句つけ阻止出来うる正統理由が成立したという考え。>鳩山由紀夫憲法改正が現実になった時、今回の強行採決が汚点として残るのではないか」