カラダブーム

前にカキコしたように、ココロブームに引き続いて現在はカラダブームである。絶対/正義をいうこと=理想を追求して止まない現在であるが、そうしたゆれうごくココロ以上の「絶対基準」としてのカラダという意味あいが強い。そしてそのカラダとは、手入れしない自然ではなく、完璧にコントロールされた「ナチュラル」ってトコが一番のキーである。いわば、人間の最後の聖域「身体=老い」をコントロールして「完全体」となるという壮大な野望系=人類補完計画か?
オニババ本は一見、性ライフを強調して快楽を勧めているようでいて、経血コントロールに見るような何時までも老いない身体=身体矯正シバキ主義に陥ってるし、シニアライフを謳歌する雑誌でも、その欲望の大半は「いつまでも生き生きとして活動的な若さ」だったりする。20代でもエイジレス化粧品の売上が好調。id:lepantoh:20050109が取上げられてるSTORY/VERYの「プチセレブ」なライフスタイルとは、セレブ的ノブリスオブリージュ=大人たる資質(責任/文化/資産)を排除したなんちゃってセレブというノリがある。つまり大人に成らない子供であり、その子供が40代という中高年時期を迎えて「老いる子供」というテーマをどうやってソラすかということに全精力をそそぐことが主眼となっている。なんだか先を争って不安の先取りをしているようでもあるんだけどねー。オレ様であることを声高に主張しつつ、そんな自己であることの不幸に気が付く。 
勿論、その身体的不安には、脳化しまくってる既存思想の右翼も左翼(&フェミニズム)の中には答えはナイ。『現代思想』の一節を引いたとおり、生活維持にまつわる身体運動をくだらないもの=労働=搾取される苦役として否定排除し、自己精神活動を唯一正義とする志向がシバキ推奨されている。
ナニをどう説明しようとも、それはそもそものリアル身体=生理ではなく、身体という概念の捉え方、「表現」とその解釈問題でしかない。「若者」とはその当事者以外にとっては、内面はともかく「ビジュアル」=視覚というところで消費される対象者、商品価値をうんぬんしているということにも行き着く。そんなトコに捕われてるバカバカしさを本能的にでも感知すれば、lepantohさんがお書きになられている通り、パンツ変えなくてもへーきな10〜20代(=商品化対象者)は、そんな「清い正義なアタシ」的アイデンティティにすがる必要すらなくなってきてれば、「負け犬」*1だの「オニババ」だのなんかへでもないだろう。

難波英夫は表現の問題として「言語の違いを介さない視覚芸術は基本的にインターナショナルであり得る、と応えるのはあまりにも素朴過ぎるであろう。」と今日的現代芸術の在り方に疑問を投掛け、論の最後に荒川修作をひいている。

かって荒川修作は、見えない、聞こえない、話せない、という三重苦のヘレン・ケラーについて語った。ケラーが朝に目覚めたとして、一体どのように世界と自分を知りうるのか。毎日が暗やみの中、音もない世界からはじまるのだ。彼女はベッドから起き上がり、まず最初に、いつもの場所に揃えておいたいつものスリッパを履く。20cm程の足の裏が、20cm程のスリッパに接する。それがケラーが最初に世界に触れる瞬間であり、そのスリッパこそ、ケラーが世界に触れるための道具なのだ。
それからスリッパを掃いた足で立ち上がり、スリッパが移動した分だけ、世界はは奥へと広がる。そしてドアの前に辿り着く。そのドアを押して、スリッパを先に進めれば、世界はさらに奥へと拡がっていく。ケラーはそのようにして世界を知るのだ。ケラーにとっては、スリッパこそが世界と自分を知る道具であり、最初の入口なのだ。世界と私たちとがそのような関係にあるとすれば、私たちもまた、私たち自身のスリッパを見付けなければならない。

難波英夫 四角い窓から『再考-日本近代の絵画』カタログ

これは、スリッパに依ってアフォードされる自己&身体と世界、演繹的脳中心主義に対する帰納的(非中枢的)身体論「アフォーダンス」でもある。現代に活きる我々は、押し並べて中世的「身体」を喪失して矯正されてるのかといえば、そうぢゃあない。お高尚な理論を並べ立てる方々でもそゆモンは、チュラルボーン・ヤンキーとして、無意識に継承実践されていることが多々ある。
http://hizzz.hp.infoseek.co.jp/atrandom/h_rog/010_txt.html
http://hizzz.hp.infoseek.co.jp/atrandom/h_rog/012_txt.html
http://hizzz.hp.infoseek.co.jp/atrandom/h_rog/013_txt.html

*1:この自認は「アタシってバカだから」http://d.hatena.ne.jp/hizzz/20040602#p3という手管の亜流でしかない。