「良妻賢母主義」が生んだ「女子」

ジュディス・バトラージェンダー・トラブル―フェミニズムとアイデンティティの攪乱』は「いかなるフェミニズムも女のセクシュアリティを構築し続けてはいないだろうか」と、男根主義者だけではないフェミ系が拠り所とする「男・女」というセクシュアリティそのものも、社会構築された構築物であると指摘している。
カキコした通り「専業主婦」は現代造語であり、肉じゃが等のおふくろの味だのお節料理だのも岩村暢子『変わる家族 変わる食卓―真実に破壊されるマーケティング常識』『“現代家族”の誕生―幻想系家族論の死』で調査解明されてるが、以前カキコした「3歳児神話」 id:hizzz:20030607#p3と合わせて、雑誌等のマスメディアによって1960年代に伝搬された「創られた伝統」。流通筋では「ニッパチ」と呼ばれて売れ筋がなかった2月に、3年位前から急に関西の太巻が「恵方巻」として宣伝され、各地で節分行事としてパンや菓子に迄形態展開するような経過とそれは同じである。
総崩れな主婦ものの残る?大スローガンといえば、大妻・昭和・共立・実践といった女子大が掲げている「良妻賢母」。さて、これはどーなんであろう?儒教封建主義伝来かとおもいきや元祖本家中国の古典儒書には、んな4文字熟語は一向に出てこない。これは明治初期日本発、やっぱり雑誌造語だった。で、これまたそこに込められた意味が変遷している。
最初は「専業主婦」と同じく、新しい時代にかってなかった新しい時代をきりもりしていく近代西洋的知識をもった女性像として「良妻賢母」が明治啓蒙思想の一端として提唱された。が、しかし「女」としてか「人」としてか、どちらが子女中等教育として好ましいのかという国家的観点から下田歌子たちの基で公教育に包摂されるとき、初期の内実は変節されて天皇制家父長ヒエラルキー下の「良妻賢母主義」と化した。「人」としてよりも「女」、その路線が確定されたからこそ「女子」が誕生する。子供でもない成人でもない「女子」という性別ジャンルも、又このころに創作された「良妻賢母主義」が要請した概念なのだ。>id:hizzz:20031213 id:hizzz:20040524
そしてこれは日本にとどまらず、韓国「賢母良妻」中国・台湾「賢妻良母」と伝搬する。各地域とも漢字・儒教文化圏であるが、その言葉に共通したのは閨房に閉じこもる儒教の教えではなく、韓・中は日本の許に団結して西欧近代に抵抗せよという、富国強兵+近代国家建設に動員する為の近代ナショナリズムそのものにほかならない。『東アジアの良妻賢母論―創られた伝統