慰安婦問題の表面化

1970年代から慰安婦問題の解明&責任を追及する運動は始ってた。80年代末に韓国でドキュメンタリーが報道されたことがきっかけで、91年に元慰安婦女性が名乗りをあげたことで、韓国世論に火がついた。

内閣官房長官談話 加藤六月 1992年1月13日
1関係者の方々のお話を聞くにつけ、朝鮮半島出身のいわゆる従軍慰安婦の方々が経験されたつらい苦しみを思うと、胸のつまる思いがする。
2今回従軍慰安婦問題に旧日本軍が関与していたと思われることを示す資料が防衛庁で発見されたことを承知しており、この事実を厳粛に受け止めたい。
3今回発見された資料や関係者の方々の証言やすでに報道されている米軍等の資料を見ると、従軍慰安婦の募集や慰安所の経営等に旧日本軍が何らかの形で関与していたことは否定出来ないと思う。
4日本政府としては,累次の機会において、朝鮮半島の人々が、わが国の過去の行為によって耐えがたい苦しみと悲しみを体験されたことに対し深い反省と遺憾の意を表明してきたところであるが、この機会に改めて、従軍慰安婦として筆舌に尽くし難い辛苦をなめられた方々に対し、衷心よりおわびと反省の気持ちを申しあげたい。

宮沢首相は1992年1月に訪韓し、海部発言を踏襲した政策演説を述べる。

宮澤喜一内閣総理大臣大韓民国訪問における政策演説 宮澤喜一 1992年1月17日
我が国と貴国との関係で忘れてはならないのは、数千年にわたる交流のなかで、歴史上の一時期に、我が国が加害者であり、貴国がその被害者だったという事実であります。私は,この間,朝鮮半島の方々が我が国の行為により耐え難い苦しみと悲しみを体験されたことについて、ここに改めて,心からの反省の意とお詫び6)の気持ちを表明いたします。最近、いわゆる従軍慰安婦の問題が取り上げられていますが、私は、このようなことは実に心の痛むことであり、誠に申し訳なく思っております。
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/exdpm/19920117.S1J.html

首脳会談では「耐え難い苦しみに遺憾」に重ねて「改めておわびと反省」と発言。

日韓首脳会談 宮澤喜一 1992年1月17日
関係者の話を聞くにつけ、朝鮮半島出身のいわゆる従軍慰安婦が体験した思いを考えるにつけ、胸が詰まる。証言や資料から見ると、募集などで軍が何らかの形で関与していたことは否定できない。これまでに耐え難い苦しみに遺憾を表明したが、ここで改めて筆舌に尽くしがたい苦しみに対して衷心よりおわびと反省をしたい。

更に廬大統領に慰安婦調査を約束した。

朝鮮半島出身者のいわゆる従軍慰安婦問題に関する加藤内閣官房長官発表 加藤六月 1992年7月6日
慰安所の設置、慰安婦の募集に当たる者の取締り、慰安施設の築造・増強、慰安所の経営・監督、慰安所慰安婦の街生管理、慰安所関係者への身分証明書等の発給等につき、政府の関与があったことが認められたということである。
政府としては、国籍、出身地の如何を問わず、いわゆる従軍慰安婦として筆舌に尽くし難い辛苦をなめられた全ての方々に対し、改めて衷心よりお詫びと反省の気持ちを申し上げたい。また、このような過ちを決して繰り返してはならないという深い反省と決意の下に立って、平和国家としての立場を堅持するとともに、未架に向けて新しい日韓関係及びその他のアジア諸国、地域との関係を構築すべく努力していきたい。
この問題については、いろいろな方々のお話を聞くにつけ、誠に心の痛む思いがする。このような辛酸をなめられた方々に対し、我々の気持ちをいかなる形で表すことができるのか、各方面の意見も聞きながら、誠意をもって検討していきたいと考えている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/kato.html

1992年10月訪中した明仁は、晩餐会で発言。

楊尚昆主席主催晩餐会天皇挨拶 明仁 1992年10月23日
我が国が中国国民に対し多大の苦難を与えた不幸な一時期がありました。これは私の深く悲しみとすることころであります。戦争が終わった時、我が国民は、このような戦争を再び繰り返してはならないとの深い反省にたって、平和国家としての道を歩むことを堅く決心して、国の再建に取り組みました。
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/ ~worldjpn/documents/indices/JPCH/

明仁はここで主体(加害責任)を「我が国」と明確にした上で、「反省」を述べた。楊主席は「中日関係に不幸な一時期があったため、中国国民は大きな災難を被った。前のことを忘れず、後の戒めとし、歴史の教訓を銘記することは両国民の根本的利益に合致することである」と返答した。
翌年、政府の慰安婦に関する最終調査結果がでると、内閣は談話を発表した。これが「河野談話」である。

慰安婦関係調査結果発表に関する内閣官房長官談話 河野洋平 1993年8月4日
 いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。
 今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
 なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
 いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。
 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。
 なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/kono.html

先の調査を受けて、該当者の高齢化も鑑みて、時間がかかる法的賠償より別の実質的措置が取れないかという民間の声も相まって、補償金を民間募金で賄い運営費や医療・福祉支援などに国費補助をする「女性のためのアジア平和国民基金」が発足した。

村山内閣総理大臣による「女性のためのアジア平和国民基金」発足のご挨拶 村山富一 1995年7月
今年は、内外の多くの人々が大きな苦しみと悲しみを経験した戦争が終わってからちょうど50年になります。その間、私たちは、アジア近隣諸国等との友好関係を一歩一歩深めるよう努めてまいりましたが、その一方で、戦争の傷痕はこれらの国々に今なお深く残っています。
いわゆる従軍慰安婦の問題もそのひとつです。この問題は、旧日本軍が関与して多くの女性の名誉と尊厳を深く傷つけたものであり、とうてい許されるものではありません。私は、従軍慰安婦として心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対して、深くおわびを申し上げたいと思います。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/m_hosoku.html

元「慰安婦」の方々に対する内閣総理大臣の手紙 橋本龍太郎 1996年
このたび、政府と国民が協力して進めている「女性のためのアジア平和国民基金」を通じ、元従軍慰安婦の方々へのわが国の国民的な償いが行われるに際し、私の気持ちを表明させていただきます。
いわゆる従軍慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題でございました。私は、日本国の内閣総理大臣として改めて、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げます。
我々は、過去の重みからも未来への責任からも逃げるわけにはまいりません。わが国としては、道義的な責任を痛感しつつ、おわびと反省の気持ちを踏まえ、過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝えるとともに、いわれなき暴力など女性の名誉と尊厳に関わる諸問題にも積極的に取り組んでいかなければならないと考えております。
末筆ながら、皆様方のこれからの人生が安らかなものとなりますよう、心からお祈りしております。
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/JH/19960000.O1J.html

慰安婦問題とアジア女性基金/デジタル記念館http://www.awf.or.jp/