村山談話前後の暴言・謝罪マッチポンプ

1994年7月、首相に就任した村山富一は談話を発表する。

内閣総理大臣談話 村山富一 1994年7月31日
1わが国が過去の一時期に行った行為は,国民に多くの犠牲をもたらしたばかりでなく、アジアの近隣諸国等の人々に,いまなお癒しがたい傷跡を残しています。私は、我が国の侵略行為や植民地支配などが多くの人々に耐えがたい苦しみと悲しみをもたらしたことに対し、深い反省の気持ちに立って,不戦の決意の下、世界平和の創造に向かって力を尽くしていくことが、これからの日本の歩むべき進路であると考えます。
3いわゆる従軍慰安婦問題は、女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、私はこの機会に、改めて、心からの深い反省とお詫びの気持ちを申し上げたいと思います。我が国としては、このような問題も含め、過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝えるとともに、関係諸国等との相互理解の一層の増進に努めることが、我が国のお詫びと反省の気持ちを表すことになると考えており、本計画は、このような気持ちを踏まえたものであります。

中韓は「おわび」「反省」の明言は評価したが、そのことばに具体性がないことを指摘した。
また内閣から異論がでる。桜井新環境長官が侵略戦争をしようと思って戦ったのではないと思っている。よかれと思ったことでも迷惑をかけることが多いので全体のことはわびる必要がある。だが日本だけが悪いという考え方で取り組むべきではない。」「アジアは植民地支配から独立し、教育も普及して識字率も高い。経済復興の勢いが出てきて民族活性化につながった」と発言し即日撤回したが「(羽田〜村山と連続した)閣僚の歴史歪曲発言」として中国にまで発火、首相は不適切と辞表受理して、事実上の更迭。
翌年、戦後60年を迎えて首相は、侵略と植民地支配についての謝罪を国会決議として実現させようとしたが、与党3党間でも纏まらず、表現の後退したものとなった。「終戦五十年決議」「不戦決議」といわれるもの。

歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議 衆議院 全文 1995年6月9日
本院は、戦後50年にあたり、全世界の戦没者及び戦争等による犠牲者に対し、追悼の誠を捧げる。
 また、世界の近代史上における数々の植民地支配や侵略的行為に思いをいたし、我が国が過去に行ったこうした行為や他国民とくにアジアの諸国民に与えた苦痛を認識し、深い反省の念を表明する。
 我々は、過去の戦争についての歴史観の相違を超え、歴史の教訓を謙虚に学び、平和な国際社会を築いていかなければならない。
 本院は、日本国憲法の掲げる恒久平和の理念の下、世界の国々と手を携えて、人類共生の未来を切り開く決意をここに表明する。
右決議する。
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/JH/19950609.O2J.html

しかし衆議院での採決には自民党員の中からも欠席者が出る程に混乱し、衆議院可決したのみで参議院では提案されなかった。そして記者会見で島村宣伸文部大臣が、先の戦争が侵略戦争かとの質問に対して、「戦争はどちらかが相手を侵し勝負するわけで、侵略か進出かでないかは考え方の問題だ。優勝劣敗で勝った方が侵略するということではないか。一方的に日本だけがそういうことを行ったならば、この問題は突き詰める問題だが、世界にはいろんな事例がたくさんある。少しでも自分たちが間違っていると思ったら、国際貢献に形を変えて報い、償いをしていく方が前向きだ」と発言したが、マスコミの避難をあびて事実上の発言撤回。
それを受けて中国外交部は8月13日「短期間内に日本の閣僚がまたも歴史事実を歪曲する発言を行ったことを、我々は遺憾に思っている。国際社会は日本軍国主義の侵略の歴史についてとっくに定説を下している。歴史に正しく対処することが日中関係の重要な政治的基礎である。日本政府がこの問題を高度に重視し、日中友好協力関係に正常な発展に水をさすようなことを避けるように希望する。」とコメント。
この経過を踏まえて、内閣総理大臣談話を発表。これがのちのちの「村山談話」といわれるものであるが、最近「村山談話」が取りざたされる時の多くは、先の「終戦五十年・不戦決議」もまったく無視され、首相が一方的に談話を発表したかのごとき論調となっている。

戦後50年に向けて村山内閣総理大臣の談話 村山富一 全文 1995年8月31日
明年は、戦後50周年に当たります。私は、この年を控えて、先に韓国を訪問し、またこのたび東南アジア諸国を歴訪しました。これを機に、この重要な節目の年を真に意義あるものとするため、現在、政府がどのような対外的な取組を進めているかについて基本的考え方を述べたいと思います。
1.我が国が過去の一時期に行った行為は、国民に多くの犠牲をもたらしたばかりでなく、アジアの近隣諸国等の人々に、いまなお癒しがたい傷跡を残しています。私は、我が国の侵略行為や植民地支配などが多くの人々に耐えがたい苦しみと悲しみをもたらしたことに対し、深い反省の気持ちに立って、不戦の決意の下、世界平和の創造に向かって力を尽くしていくことが、これからの日本の歩むべき進路であると考えます。
 我が国は、アジアの近隣諸国等との関係の歴史を直視しなければなりません。日本国民と近隣諸国民が手を携えてアジア・太平洋の未来をひらくには、お互いの痛みを克服して構築される相互理解と相互信頼という不動の土台が不可欠です。
 戦後50周年という節目の年を明年に控え、このような認識を揺るぎなきのもとして、平和への努力を倍加する必要があると思います
2.このような観点から、私は、戦後50周年に当たる明年より、次の二本柱からなる「平和友好交流計画」を発足させたいと思います。
 第1は、過去の歴史を直視するため、歴史図書・資料の収集、研究者に対する支援等を行う歴史研究支援事業です。
 第2は、知的交流や青少年交流などを通じて各界各層における対話と相互理解を促進する交流事業です。
 その他、本計画の趣旨にかんがみ適当と思われる事業についてもこれを対象としたいと考えています。
 また、この計画の中で、かねてからその必要性が指摘されているアジア歴史資料センターの設立についても検討していきたいと思います。
 なお、本計画の対象地域は、我が国による過去の行為が人々に今なお大きな傷跡を残しているアジアの近隣諸国等を中心に、その他、本計画の趣旨にかんがみふさわしい地域を含めるものとします。
 この計画の下で、今後10年間で一千億円相当の事業を新たに展開していくこととし、具体的な事業については、明年度から実施できるよう、現在、政府部内で準備中であります。
3.いわゆる従軍慰安婦問題は、女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、私はこの機会に、改めて、心からの深い反省とお詫びの気持ちを申し上げたいと思います。
 我が国としては、このような問題も含め、過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝えるとともに、関係諸国等との相互理解の一層の増進に努めることが、我が国のお詫びと反省の気持ちを表すことになると考えており、本計画は、このような気持ちを踏まえたものであります。
 なお、以上の政府の計画とあいまって、この気持ちを国民の皆様にも分かち合っていただくため、幅広い国民参加の道をともに探求していきたいと考えます。
4.また、政府としては、女性の地位向上や女性の福祉等の分野における国際協力の重要性を深く認識するものであります。
 私は、かねてから、女性の人権問題や福祉問題に強い関心を抱いております。明年、北京において、女性の地位向上について検討し、21世紀に向けての新たな行動の指針作りを目指した「第4回世界婦人会議」が開催されます。このようなことをも踏まえ、政府は、今後、特にアジアの近隣諸国等に対し、例えば、女性の職業訓練のためのセンター等女性の地位向上や女性の福祉等の分野における経済協力を一層重視し、実施してまいります。
5.さらに、政府は、「平和友好交流計画」を基本的に据えつつ、次のような問題にも誠意を持って対応してまいります。
 その一つは在サハリン「韓国人」永住帰国問題です。これは人道上の観点からも放置できないものとなっており、韓国、ロシア両政府と十分協議の上、速やかに我が国も支援策を決定し、逐次実施していく所存です。
 もう一つは、台湾住民に対する未払給与や軍事郵便貯金等、長い間未解決であった、いわゆる確定債務問題です。債権者の高齢化が著しく進んでいること等もあり、この際、早急に我が国の確定債務の支払を履行すべく、政府として解決を図りたいと思います。
6.戦後も、はや半世紀、戦争を体験しない世代の人々がはるかに多数を占める時代となりました。しかし、二度と戦争の惨禍を繰り返さないためには、戦争を忘れないことが大切です。平和で豊かな今日においてこそ、過去の過ちから目をそむけることなく、次の世代に戦争の悲惨さと、そこに幾多の尊い犠牲があったことを語り継ぎ、常に恒久平和に向けて努力していかなければなりません。それは、政治や行政が国民一人一人とともに自らに課すべき責務であると、私は信じております。
http://www.kantei.go.jp/jp/murayamasouri/danwa/asia-danwa.html

これに対して中国外交部は「我々は『8・15』にあたって、村山首相が日本政府を代表し、過去の歴史について談話を発表したことに留意している。我々は、過去の植民地支配と侵略の歴史について深く反省し、アジア各国人民に謝罪した日本政府の姿勢は積極的なものだと考える。」と表明した。しかし韓国では金泳三大統領が、「過去に比して大きく前進」したものの閣僚問題発言が続いたことで「満足できるものではない」と酷評。10月には韓国国会で「日韓併合条約が当初から無効だったことを認めることを日本に求める決議」が可決。11月江藤隆美総務長官が「日本の朝鮮植民地統治には良いこともした」と発言していたことが明らかとなり、さらに日韓は緊張し、総務長官は辞任した。
これ以降、歴代首相は歴史認識については「村山談話を踏襲する」という趣旨を明言し、8月15日の全国戦没者追悼式では、毎年アジア諸国への〈謝罪〉のことばが首相式辞として述べられるのが慣習となった。