「美しい日本」の強硬な安倍政権

ワシントン・ポスト紙「(安倍氏は)過去をごまかすことでは小泉首相より上だ。安倍氏東京裁判の正当性を疑問視してきた」「新首相は歴史に誠実でなければならない」「過去の誤りを認めないなら責任ある民主主義として受け入れられないだろう」、シンガポール・ストレーツ・タイムズ紙「安倍は明確な靖国問題で疑問の余地を残してはならない。もし彼が神社参拝を選べば、日本の指導者や天皇が過去に示した悲しみと後悔の表現は取り消されてしまう。小泉が鼻であざけったあとに北東アジアを包んだ冷気は長くとどまることになろう」と、就任前からその強硬な姿勢が各国から懸念をもたれていた安部普三首相は、2006年9月29日所信表明演説拉致問題の解決なしに国交正常化なし」の「対話と圧力」姿勢を堅持する。>http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2006/09/29syosin.html
10月8日訪中し、温家宝首相との首脳会談に臨む。中国首脳の来日は7年ぶり。北朝鮮には強硬姿勢を取り続ける安倍首相だが、核否認で小泉政権で冷え切った中国との関係の修復に当たっては、靖国参拝については明言を避けた。

中国訪問に関する内外記者会見 安倍普三 2006年10月8日
質疑応答:本日の会談において、中国の指導者から、歴史を鑑とし、未来に向かうとの精神につき言及があった。また、政治的障碍を取り除いて欲しい旨の話があった。私はこれに対し、過去の歴史を直視し、平和国家としての歩みを続けていく、我が国はかつてアジア諸国の方々に対して多大な損害と苦痛を与え、傷跡を残したことに対する深い反省の上に戦後60年の歩みがある、この思いは、この60年を生きた人達、そして私の共通の思いであり、そしてこの思いはこれからも変わることはないということを述べた。
靖国神社の参拝については、私の考えを説明した。そしてまた、私が靖国神社に参拝したかしなかったか、するかしないかについて申し上げない、それは外交的、政治問題化している以上、それは申し上げることはない、ということについて言及した。その上で、双方が政治的困難を克服し、両国の健全な発展を促進するとの観点から、適切に対処する旨述べた。
http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2006/10/08chinapress.html

翌日10月9日訪韓し、盧武鉉大統領と首脳会談を行った安倍首相は、やはり核・拉致問題を主軸とした会見をおこない、北朝鮮に対して厳しい対応を訴えた。

中国訪問に関する内外記者会見 安倍普三 2006年10月8日
質疑応答:かつて、日本がアジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与え、そして大きな爪痕を残した。このことについて深刻な反省の上に日本の戦後60年の歩みがある。この思いは、この60年生きた人々と私は共通の思いであり、この思いはこれからも変わることはないと思う。そして、靖国に参拝する、しないという問題だが、靖国問題についても盧武鉉大統領に私の考えを申し上げた。
http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2006/10/09koreapress.html

日韓両国でのいずれの会見も「歴史認識」問題について安倍首相は、質問されて初めて言及する類ものであった。
2006年10月16日国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議採択を受け、財務省は改正外為法による金融制裁強化の具体的な検討に着手した。19日北朝鮮のミサイル発射を受けた安保理決議に基づいて金融制裁を発動。20日閣議北朝鮮核実験は『日朝平壌宣言』違反とする答弁書を決定する。
10月30日北朝鮮国営朝鮮中央通信は、安倍首相の国家論「美しい日本」について、「日本の新内閣が本当に美しい国をつくろうとするなら、(対米追従の)悪い癖を直すべきだ」と論評、労働党機関紙も「植民地支配の罪悪を清算しないで、美しい国をうんぬんするのは無意味」と非難。日本が米国の対北朝鮮敵視政策に「便乗」しているため、日朝間では「軍事的衝突が起こり得る険悪な情勢が生まれている」と懸念した。また北朝鮮への追加制裁検討の方針を取りまとめたことにも反発した。こうして「核問題」主体の6カ国協議の駆け引きが始まる。
2007年4月11日温家宝中国国務院総理が来日して「日中共同プレス」を発表した。
拉致問題」は、拉致問題対策室を設置すれども結局まったくなんの進展ないまま、最後は「政治とカネ」な失言に追いまくられて安倍政権は突然自壊する。

国連は1992年に日本政府から「従軍慰安婦」に関する資料を入手して検討を始め、調査・論議の結果、慰安所国際法違反であるとするIFOR(国際的な人権擁護組織)の提案が採択され、正式な国連文書として配布された。1996年1月4日国連人権委員会に提出された『戦時軍性奴隷制問題に関する朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国及び日本への訪問調査報告書』(クマラスワミ報告書)は、慰安婦は「軍性奴隷制」であり、日本政府が国際人道法の違反につき法的責任を負っていると論評。1998年6月22日提出の『奴隷制の現代的形態』(マクドゥーガル報告書)では、慰安婦制度を「レイプ・センターでの性奴隷制」と解釈した。そして以下を日本政府に勧告した。
 (1)日本帝国陸軍が作った慰安所制度は国際法に違反する。日本政府はその法的責任を認める。
 (2)日本の性奴隷にされた被害者個々人に補償金を支払う。
 (3)慰安所とそれに関連する活動について、すべての資料の公開をする。
 (4)被害者の女性個々人に対して、公開の書面による謝罪をする。
 (5)教育の場でこの問題の理解を深める。
 (6)慰安婦の募集と慰安所の設置に当たった犯罪者の追及を可能な限り行う。
1997年国連差別防止・少数者保護小委員会では「アジア女性基金」事業を「十分とは言えないが、問題解決に向けての一歩前進である」と一定の評価をした。2001年6月国際労働機関ILOは、慰安婦問題が国際労動協約に反する案件として、正式に採択された。 2005年ユニセフ「ストップ!女性への暴力」キャンペーンの中でこの問題を扱った。これらの勧告に対して一貫して政府は「事実関係については留保」という態度を示し個人補償などの必要性を認めていない。
以前より河野談話否定するタカ派で、就任前よりその「歴史認識」について中韓に懸念表明されていた安倍首相は、「慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会」を立ち上げ、2007年3月慰安婦問題について国会答弁で従軍慰安婦を集めるために旧日本軍が直接、強制した具体的な証拠はない」と主張。中国・台湾・韓国・フィリピン・インドネシアらの当事者国から相次いで抗議声明がだされ、欧米からは過去の旧日本軍による戦争犯罪を否定する「歴史修正主義」との批判を浴びた。米ワシントンポスト紙は「北朝鮮による日本人拉致問題に熱心なのと対照的に日本自身の戦争犯罪には目をつぶっている」「二枚舌」と論評したのを始めとして、日系議員が外交委員会に提出していた従軍慰安婦問題の対日謝罪要求決議案と共に、米主要各紙は日本政府の不誠実さを大々的に報道した。これを阻止すべく首相は米ニューズウィーク紙などに応えて、慰安婦について「人間として心から同情する。首相として大変申し訳なく思っている」「彼女たちが慰安婦として存在しなければならなかった状況につき、我々は責任がある」との認識を示した。2007年4月27日訪米した安倍首相は、ブッシュ大統領との首脳会談の中で慰安婦問題について説明し了解を得て、採決を見送らせ問題沈静化させようとした。が、女性を「性奴隷」とした「人権問題」として、抗議運動は拡大していった。
こうした抗議&報道の広がりに危機を感じた慰安婦強制連行否定派の5名が主体となり、2007年6月14日付「歴史事実委員会」名で米ワシントンポスト紙に慰安婦募集に日本政府や軍の強制はなかった」などとする全面意見広告『The Facts』を出した。しかしその文章そのものにも著しい矛盾があったことなどから酷評され、逆に慰安婦制度の非論理性がクローズアップされることとなる。このような経過も相まって、2007年6月にアメリカ合衆国下院外交委員会で、従軍慰安婦問題の対日謝罪要求決議である『アメリカ合衆国下院121号決議』が可決された。これに前後してカナダ・英・オランダ・EU・フィリピン・オーストラリア・台湾・香港・韓国などの行政府議会機関で日本政府に慰安婦問題解決を促す勧告・決議が、次々と国際社会では採決されていった。
従軍慰安婦問題を論じるの掲示http://ianhu.g.hatena.ne.jp/bbs
アムネスティ:60年を経てなお待ちつづける:日本軍性奴隷制のサバイバーたちに正義を(「従軍慰安婦」問題)2005年
http://www.amnesty.or.jp/uploads/Japan_Sexual_Slavery_final.pdf